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元カノの子供
第一章

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                元カノの子供
福本信彦は家の電話に出た後で妻の英美里に暗い顔で言った。癖のある黒髪で眉は濃く五角形の顔だ。目と唇は小さ目で中肉中背である。
「母さんが入院するらしい」
「えっ、何かあったの!?」
 英美里は夫の言葉に即座に顔を曇らせた。大きなやや垂れた目で大きな愛嬌のある感じの口から八重歯が見えている。茶色の髪をショートにしていて一五五程のすらりとしたスタイルだ。夫はサラリーマンで妻は在宅ワークだ。
「入院って」
「いや、盲腸らしいよ」
「盲腸なの」
「ちょっと手術するからって」
 入院してというのだ。
「今親父から連絡あったよ」
「そうなの」
「まあな」
 夫は妻に首を傾げさせつつ言った。
「退院したら」
「そうしたらよね」
「それのお祝い持って行くか」
「お見舞いもしないと」
「親父いいって言ってたけど」
「それは気持ちで」
 それでとだ、妻は話した。
「行きましょう」
「そうだな、そうするか」
「ええ、ただ大事はないのね」
「普通の盲腸らしいよ」
「じゃあ心配することないのね」
「特にな、ただ入院している間お見舞い行くか」
 母の言葉を受けて述べた。
「そうするか」
「そうしましょう」  
 夫婦で話してだった、実際に。
 二人は見舞いに行った、信彦の母は特に命に別状はなく手術も無事終わって後は退院を待つだけだった。
 それで病室でも元気だったのでだ。
「よかったな」
「そうね」
 夫婦はお見舞いが終わってから病院の廊下の中を歩きつつ話した。
「お義母さんお元気で」
「盲腸でもな」
「放っておいたら危ないし」
「手術のミスだってな」
 この危険もというのだ。
「あるしな」
「そうよね」
「そういうのがなくて」
「後は退院されるだけだし」
「それじゃあな」
「よかったわね」
「後は退院したら」 
 夫は妻に笑って話した。
「その時にな」
「お祝いでね」
「何かプレゼントしような」
「何がいいかしら」 
 夫婦で笑いながら話した、だが。
 ふと前を見てだ、夫は動きを止めた。妻はそれを見て問うた。
「どうしたの?」
「いや、今な」
「今?」
「目の前高校時代の彼女が通ったんだよ」
「そうだったの」
「ああ、赤ちゃん抱いてたよ」
 そうしていたというのだ。
「横切ったんだけれどな」
「結婚されたの」
「みたいだな、それでな」
 夫は妻に話した。
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