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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
敢闘編
第五十七話 思惑 T
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、人事局長は参謀長を制した。
「まあ聞きたまえ。軍内部でも色々あるのだ。軍内部の序列、配置、宮廷序列…さるお歴々の派閥争い…そこに手を突っ込まねばならぬくらいなら、伯は大将に留め、その司令部を強化する、とのやんごとなき方々の間で話し合いがあったのだ。イゼルローン失陥、叛徒共のアムリッツァ侵攻…その中でも著しい功績があった卿等に報いねばならんとも伯もおっしゃられていた」
確かに伯爵も分艦隊司令官達も二階級特進となれば、伯は上級大将、伯の縁者達の分艦隊司令官達も一挙に大将や中将になる。となると軍内部のポスト争いが起きかねない。さすがに大将、中将を分艦隊司令官のままではつたないし、かといって彼等に大将という地位に見合うだけの能力があるかどうかもはっきり言って未知数だ。それにもしそうなった場合、当然軍内部でのヒルデスハイム伯の発言権は増す。それは同時にブラウンシュヴァイク公の影響が軍内部に拡がるという事でもある。そしてその状況は対抗閥であるリッテンハイム侯が見逃す筈はなく、軍が門閥貴族にいいようにされる事態を引き起こしかねない。現在の伯爵を見る限り、そんな事態は伯爵の望むところではない筈だし、更に軍、政府そして皇帝すらも望まないだろう。であれば帝国上層部に影響の少ない我々を昇進させ、伯爵の艦隊司令部強化を行った方がよい、と判断したのだろう…。

 「…重ね重ね、御礼申し上げます。謹んで拝命いたします」
参謀長が深々と頭を下げた。俺もキルヒアイスもあわててそれにならう。
「礼はヒルデスハイム大将に言いたまえ。本来ならばこのような事はないのだ。だが未曾有の事態と言われてはな…まあ人事局としても卿等の力量を見誤っていた面はある。そこは素直に認めよう。話は以上だ…ああ、司令長官の執務室に向かいたまえ。伯爵と司令長官がお待ちの筈だ」
「はっ。失礼いたします」
人事局長室から出ると、参謀長が大きく息を吐いた。
「まさか閣下と呼ばれる日が来るとはな。霹靂とはこの事だな」
「おめでとうございます。准将閣下」
「止めてくれ、まだ大佐だ…卿等も明日からそれぞれ大佐、少佐か。昇進おめでとう…では長官執務室に向かうとしようか」

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