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趙弁の勇気
第一章

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                趙弁の勇気
 後漢の終わり頃漢中後に道教の軸の一つとなる五斗米道の拠点がありそれを開いた張陵の下にだった。
 趙弁という者がいて修行に励んでいた、張陵はその彼を見て言った。
「道術はまずは心根だ」
「それ次第ですね」
「幾ら修行を積んで力を備えてもだ」
 道士としてのそれをというのだ。
「方術にはならぬ」
「左道になりますか」
「左様、左道なぞ使ってはならぬ」
 若く細く流麗な眉に長方形の顔と引き締まった唇ときりっとした目の彼に話した、張陵は白く長い髭に面長で強い光を放つ目を持つ老人である。二人共この教えの者の服を着ている。
「決してな」
「だからまず心根ですか」
「お主のそれを試したい」
 彼の心を見る為にというのだ。
「よいか」
「わかりました」
 趙弁は師の言葉に素直に応えた。
「それでは」
「うむ、試練を与えるぞ」
 こう言ってだった。
 張陵は趙弁に七つの難しい試練を与えた、そのうち六つをだった。
 趙弁は果たしていった、他の弟子達もそうしていき。 
 張陵は趙弁を含めた弟子達に話した。
「これまで見事だった、ではだ」
「最後の試練ですね」
「それを与えよう」
 趙弁に答えてだった。
 彼は趙弁も他の弟子達も連れて雲台山に登った、そのうえで。
 崖にある高い岩の頂に自ら上がりその根元に斜めに生えている一本の桃の木を指差して彼等に告げた。
「あの桃を見るのだ」
「険しい場所に生えていますが」
「それでもですね」
「大きな実が幾つも実り」
「見事なものですね」
 弟子達はその桃の木を見て師に答えた。
「あの実を取ろうと思うと」
「かなり難しいですが」
「どうすればよいか」
「お主達にこれかで教えたことから取ってもらう、そしてその桃をわしに差し出せば及第としよう」 
 こう言ってだった。
 張陵は弟子達に桃を取らせた、見ればだった。
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