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無茶振りに応えるレストラン
第二章

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「本当にね」
「お断りもですか」
「僕から言うから」
「いえ、あと少しですし」
 それでというのだ。
「もうあらかた出来てデザートだけですね」
「まだ注文来ていないのはね」
「果たします」
「そうしてくれるんだ」
「はい、必ず」
 こう言うのだった、だが。
 そのデザートの注文にだ、大久保は言った。
「フランツ=ヨーゼフ帝が食べていたザッハトルテか」
「そう言ってこられましたね」
「オーストリアの皇帝陛下だった人だね」
 フランツ=ヨーゼフ帝と聞いてだ、大久保は眉を顰めさせて言った。
「確か」
「ハプスブルク家の」
「欧州一の名門の」
「皇帝陛下です」
「そんな人が食べていたものなんて」
「只のザッハトルテじゃないですね」
 掛布も言った。
「その食材は」
「最高級だね」
「揃えましょう」
「ええと、どんな食材かな」
 大久保はすぐに食材の調達にかかった、幸いその皇帝が食べていたザッハトルテの食材は全てその地域のものが揃った。そうしてだった。
 掛布はすぐに作り客に出した。客はそのザッハトルテも食べた。すると大久保に満面の笑顔で語った。
「いや拙者の我儘を全て適えて頂き感無量」
「そう言って頂きますか」
「このこと天下に広く知らせる所存」
 こう言って実際にだった。
 何とこの客は世界的に有名なデザイナーでありインフルエンサーでもあってだった。
 自分の敢えて行った我儘のことを話してその非礼も心から詫びたうえでだった。
 この店がその我儘にイベントであったとはいえ誠実に応えてくれたことを紹介した、するとだった。
「お店の評判が凄く上がったね」
「はい、嫌な顔一つせずにイベントに誠実に応える」
「どんな無茶振りにね」
「そうしたお店だと」
「大変だったけれどね」
 大久保は掛布にその時のことを思い出しつつ話した。
「それでもね」
「そのことが宣伝になりましたから」
「よかったね」
「はい、本当に」
 掛布は笑顔で応えた。
「よかったです」
「そうだね」
「はい、ではですね」
「この誠実さを忘れないでね」
「これからもやっていきましょう」
「そうしていこう」 
 他の店のスタッフともこう話してだった。
 大久保も掛布も誠実に店の仕事をしていった、すると店はさらに誠実だと評判になった。それでだった。
 店は繁盛した、誰もがそのことに感謝した。そうして誠実に仕事をしていったのだった。


無茶振りに応えるレストラン   完


                 2022・10・24
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