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銀河日記
夜の街、月夜の下で
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の色があったが、男はそれを歯牙にもかけない。寧ろ、その色の表れを心から楽しんでいるようであった。
男の服は、豪奢で、何処か古めかしい。貴族である事は、直ぐに解った。

金色の影は、近くにある木の棒に手を伸ばそうとした。その時、高い足音のスタッカートが聞こえた。次いで、低く鈍い音が辺りに、僅かに響いた。安全装置が解除された音だった。

「そこまでにしていただこう」
「な、なんだ、貴様は・・」
男の声に焦りの色が見える。この時間帯、此処を歩く人間がいるのかと思ったからだ。何か突きつけられているものが何かも分かった。金属質な堅い棒、先端部にかけて細くなっているようで、そこには穴が開いているようだ。これは、銃口だ。男がそう考えるのに、時間はそうかからなかった。

「もしや、御分かりにならないので?帝都駐在の憲兵隊です。卿を、婦女暴行の現行犯で逮捕させていただきます。」
「!!ふ、婦女暴行!?何を言う!私は貴族で、女は平民だ。一体何処に、何の問題がある」
銃口を突き付けたアルブレヒトは冷徹な声で男に告げ、手錠をかけた。手錠のロック機能が作動し、男の二本の腕を一つに束ねた。男は、それに驚いて弁解を始める。
「幾ら身分の差があろうと卿は法律を破ったのだ。彼女という明確な目撃者もいる。言い逃れは出来ない。そこは御分りかな?」
アルブレヒトはそれに対し強い口調で言い、右手に持った獣に力を込めた。銃口の堅い感触が、男の背中をぐりぐりと抉るように男の肌を押す。
「ま、待て!話をさせろ。わ、私はヒルデスハイム伯の従弟だ。そして帝国男爵だ。わかるであろう?無論、ただとは言わん。この手錠を外して、私を解放してくれれば、卿の昇進をヒルデスハイム伯を通じて軍の上層部に提案しよう。な、悪い話ではあるまい?見たところ、卿は平民、階級も低いと見える。もっと上を目指さんか?」
男はそれに恐怖心を刺激されたのか、振り向いて弁解を始めた。話を聞くごとに、アルブレヒトの眉間が、深い溝を刻みだしていた。
「これは失礼した。しかしながら男爵閣下。生憎ではあるが、私は中佐という階級でも満足しているのでね。お断りさせていただこう。それと一応、言っておくが、私は貴族だ。一言に貴族と言っても、名ばかりの帝国騎士だがね」
「な、ならば、同じ貴族同士、手を取り合おうではないか。何故、これを断る必要がある?なかろう?なぁ?」
冷淡な口調でアルブレヒトは告げたが、それにも男は希望と活路を見出したのか、どこか楽天的な口調でそう言った。

「すまんな、確かに私は帝国騎士だが、貴族が何たるか、というぐらいは聞かされた事がある。その誇りと言う奴も一緒にね。だが、今の卿の行動はそれにも反しているのは疑いの余地もない。大人しく、我々の詰所に来て戴こう。その方が、卿の家名も穢れまい」
「な、貴様
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