暁 〜小説投稿サイト〜
八剱銀杏
第二章

[8]前話 [2]次話
「前の二つの戦争でもそうだったしな」
「支那それと露西亜との戦争だね」
「勝ったが沢山の人が死んだ、特に今の戦争は激しいからな」
「人も死ぬんだね」
「大勢な、それでだ」 
 その為にというのだ。
「あの学生さんもな」
「帰って来ないんだね」
「きっとな」
「戦死するんだ、あのお兄さん」
「残念だがな」
「あのお姉さんは恋人の人が」
 孫はさらに話した。
「そうなるんだね」
「それが戦争だ、仕方ないんだ」
「人が大勢死ぬんだ」
「勝ってもな、しかし勝たないとな」
 老人は孫にこうも言った。
「日本は大変なことになるんだ」
「滅ぶんだね」
「そうなるからな、だからな」
「勝たないといけないね」
「そして日本は絶対に勝つからな」
「うん、何があってもだね」
「どうしようもない時はな」
 まさにそうした時はというのだ。
「祖父ちゃんも戦うぞ」
「じゃあ僕も」
「ああ、一億火の玉だ」
「そして日本は勝つんだね」
「何があってもな」 
 老人はこうしたことも話した、そしてだった。
 老人と孫は神社に毎日参拝していた、それは老人の日課で散歩がてらそうしていて彼を慕う孫も一緒だった。
 そして毎日銀杏の木の下にだった。
 その少女フジを見た、孫はその彼女を見て祖父に言った。
「あのお姉さん今日もいるね」
「そうだな、そうしてな」
「あのお兄さんが帰って来るのを待っているんだ」
「生きて帰ることをな」
「そうなんだね」
「そしてお願いしているんだ」
 待つだけでなくというのだ。
「相手の人が生きて帰ることをな」
「けれど」
「ああ、ここはな」
「日本武尊様が姫様にまた会うって約束されて」
「もう二度とだったからな」
 帰って来ることはなかった、そうした場所だったからだというのだ。
「あの学生さんはな」
「帰って来ないんだね」
「そうだ、残念だがな」
「それでもだね」
「あの娘さんは待っているんだ」
 恋人である彼をというのだ。
「そうなんだ」
「可哀想だね」
「ああ、わしも帰ってきて欲しいが」
 それでもというのだ。
「しかしな」
「それでもだね」
「戦争も激しくなる一方だしな」
 それと共に戦死者も多くなっていてというのだ、事実二人が住んでいる街の戦死者の報も増えている。
「あの学生さんはな」
「どうしてもだね」
「生きて帰って来ないだろうな」
 娘を見て言うのだった、戦争は事実日増しに激しくなり。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ