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鶴柿
第二章

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「だからだ」
「それでか」
「だからおめえ等にはな」
「獲る時はか」
「あっち行けだろ、いつもふんだんに食ってるだろ」
「それでも人間程じゃないぜ、猿も食うしな」
「食ってることは食ってるな、だからな」
 それでというのだ。
「おめえ等にはそうなんだよ」
「そうか、まあ好きにやりな」
「そういうことでな、それでだ」
 順吉は烏と話した後であらためて鶴の親子に話した、その烏も他の烏も相変わらず柿を美味そうに食べている。
「食え、いいな」
「有り難うございます」
「では頂きます」
「ああ、そうしろよ」
 順吉も他の百姓達も笑顔で言った、そして他の柿達も出してだった。
 鶴の親子に食わせた、鶴達は食べ終われると彼等に深々と頭を下げて感謝の意を述べて空に戻った。
 秋が終わる冬になってだった。
 人々は今度は干し柿を食べた、だがその干し柿もだった。
 種が多かった、それで順吉jの倅の順一がだった。
 寺子屋から帰って家の庭の縁側に座って干し柿を食べているとだった。
 種を喉に詰まらせた、これには順吉も女房のかの亭主が牛蒡なのに対して色白ででっぷりと太って大根の様な彼女も驚いた。
「おい、これは大変だぞ」
「種が多いから気をつけろって言ってたのに」
「言わんこっちゃない」
「ここの柿は種が多いのに」
「おい水持って来い水」
 亭主は女房に言った。
「それを飲ませて種を流せ」
「今熱いお茶しかないよ」
「何っ、どうしてだ」
「冬だからあったまる様にだよ」
「それじゃあ井戸から水汲め水」
「そうだね」
「おいおい、何やってんだ」
 丁度庭の木のところにいた烏が言ってきた。
「慌てたらどうしようもねえだろ」
「そうだよ、こうした時こそ落ち着いてな」
「水持って来ればいいよな」
「この旦那達何騒いでるんだ」
「別に死ぬ訳でもないだろ」
「馬鹿野郎、死なねえでも苦しいだろうが」
 順吉はその烏達に言って来た。
「そもそもおめえ等立って種を喉に詰まらせるだろうが」
「その時はすぐに水飲んでるしな」
「秋もそうしてたしな」
「それでおいら達は平気だよ」
「だから旦那の坊ちゃんもそうだろ」
「そういう訳にいくか、すぐに水を持って来い」
「あの」 
 大騒ぎになっているそこにだった。
 鶴が来た、見ればその鶴は。
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