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竹の間から
第二章

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「月もよいですね」
「灯りを出す月もですね」
「竹と竹の間に見えますが」
「それもよいですな」
「普段の夜に見る月もいいですが」
「竹と竹の間の月も」
「そうですね、ですから」
 それでと言うのだった。
「これはです」
「はい、実にですね」
「これは素晴らしいですね」
「竹だけでなく月も」
「そちらも」
「ここは私の別邸の中でも味気ないと思っていました」
 源氏の君は供の者達に語った。
「これまでは。ですが」
「今は違いますね」
「竹と月を見て」
「あまりにも美しいので」
「それで、ですね」
「ここもまたよしとです」
 その様にというのだ。
「今は思っています」
「左様ですね」
「我等も同じ想いです」
「この竹と月は実にいいです」
「素晴らしいものです」
「先日ある書を読みました」
 源氏の君はこうも語った。
「竹取物語というものですが」
「あのかぐや姫のお話ですね」
「竹を切れば姫が出て来た」
「そして最後は月に帰る」
「あのお話ですね」
「あのお話を思い出しました」
 こう語るのだった。
「今観ていますと」
「そうですね、確かに」
「ここにかぐや姫がいればです」
「まさに竹取物語です」
「月から人が来そうです」
「はい、私はかぐや姫に会ったことはありませんが」
 それでもというのだ。
「これは実に素晴らしき景色、是非我が愛しき人を呼んで」
「こちらにですね」
「そうしてですね」
「共にご覧になられたいのですね」
「そうお考えですね」
「左様です」 
 穏やかな笑顔と声で語った、そして。
 源氏の君は都に戻ると紫の上彼の第一の妻である彼女に誘いをかけた。
「竹と月を見たくありませんか」
「どちらも都でも見られるでしょう」
 紫の上はこう返した、長い黒髪は実に奇麗で絹の様である。白い肌と歯で唇は小さく赤く黒い切れ長のきらきらとした目をしている。
「そこをそう言われるとは」
「おわかりですね」
「あなたの妻ですから」
 紫の上は源氏の君に微笑んで答えた。
「あなたのお考えは」
「そうですね」
「ではです」
「私の愛しき人としてですか」
「そのお誘い受けます」
「それでは」
 源氏の君は笑顔で応えた、こうしてだった。
 彼は紫の上を都からその別邸に案内した、着いたのは昼だったが源氏の君は紫の上にこう語ったのだった。
「夜になればです」
「その時にですね」
「ご覧になって頂けるので」
「今はですね」
「舞楽は如何でしょう」
「そうですね」
「それに今は紙と筆も用意しました」
 そうしたものもというのだ。
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