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麗しのヴァンパイア
第四百八十九話

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             第四百八十九話  はじめて履いたヒール
 ヒールを履いてみてだ、華奈子は苦い顔で言った。
「ちょっと以上にね」
「動きにくいわね」
 美奈子は戸惑った顔で言った。
「ヒールって」
「そうよね、シューズと比べたら」
 いつも履いているそれと、というのだ。
「もうね」
「全く違うわね」
「履くまで考えたこともなかったけれど」
 それでもというのだ。
「いざ履くとね」
「これはきついわね」
「足の先が痛くなるかも」
 履いていると、というのだ。
「それで素足だから靴ずれもね」
「しそうね」
「靴履く時は靴下履いてるけれど」 
 華奈子も美奈子もいつもである。
「それもないから」
「これは歩きにくいうえに」
「靴ずれもね」
「しそうね」
「そうよ、ヒールって馴れるまで大変なのよ」
 玄関の入り口である廊下のところから母が言ってきた、そうして娘達を見てさらに言うのだった。
「これがね」
「そうなのね」
「馴れるまで大変なのね」
「歩きにくいし足の先が痛くなるし」 
 双子が心配している通りにというのだ。
「靴ずれもね」
「するのね」
「やっぱりそうなるのね」
「そうよ、それがヒールよ」
「普段のシューズならいいのに」
「ドレスの時は駄目なのね」
「ドレスだとね」
 それならというのだ。
「もう靴はね」
「ヒールじゃないと駄目なのね」
「どうしてもなのね」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「今回はお母さんが先生のお家まで車で送ってあげるわ」
「そうしてくれるの」
「悪いわね」
「悪くないわ、だって歩きにくいのは事実だから」
 そうした靴であるということはというのだ、母は自分の娘達にそのことをはっきりと言った。そうしてすぐにだった。
 車の鍵を取って来た、そうして二人を家の車に乗せて今田先生の家まで送ったのだった。


第四百八十九話   完


                  2022・7・15
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