第一章
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お店は場所も大事
屋台でラーメンをやっている下田博雄はこの時困っていた、二十代前半で細面で茶色の髪の毛をショートにしていて小さな優しい目と薄い唇と痩せた身体である。
彼はある店で修業した後暖簾分けの形で屋台のラーメン屋をはじめたが客がさっぱり来ないのだ、それでだ。
困っていた、それで師匠でもある働いていた店の天主の大林祐樹にも言った。大柄で逞しい身体の五十代の男だ。
「本当にさっぱりですよ」
「安心しろ、お前の腕は確かだ」
大林は店のカウンターでラーメンを食べる下田に話した。
「俺が認めてるんだぞ」
「麺作りも打ち方も茹で方もですね」
「スープだってな、野菜の切り方もチャーシューもな」
その全てがというのだ。
「お前は俺が免許皆伝出したんだ」
「高校卒業と一緒に働けせてもらって」
「そうだ、俺と同じ位にな」
今の彼はというのだ。
「美味いラーメンを作ってるぞ」
「自信はあるんですけれどね」
師匠の男らしい顔を見つつ話した、今食べているラーメンは彼が作ったものだ。
「それがです」
「さっぱりなんだな」
「それで困ってます」
「ラーメンは味がよかったらな」
それならとだ、大林はまた下田に言った。
「あと接客でだ」
「お客さんが来てくれますね」
「お前はその接客もいいからな」
「大丈夫ですか」
「きっかけさえあったらな」
そうであればというのだ。
「安心しろ、お前はだ」
「店やっていけますか」
「そうなる、お前なら大丈夫だ」
こう弟子に言うのだった、その励ましは嬉しかったが。
下田は客が来ないことに困っていた、そんなある日のこと。
ふらりと店に来た六十位のサラリーマン風の客に注文された一杯を出した、客は一口食べると目を瞠って言った。
「これはいいね」
「美味いですか」
「ああ、あんた若いが」
ラーメンを作った下田に話した。
「凄い腕だよ、これはいいよ」
「そうですか、ですが客足はさっぱりなんですよ」
下田は客に困った顔で述べた。
「これが」
「そうだろうね」
客はそれは当然とした。
「ここはこの時間人がさっぱり来ないからね」
「そういえばお店の前殆ど通らないですね」
「わしも今日はいつもの帰り道が工事中ばかりでね」
それでというのだ。
「たまたまだよ」
「通られたんですか」
「それでふと寄ったしね」
この屋台にというのだ。
「そうだからね」
「そうですか」
「この時間なら駅前がいいよ」
「駅前ですか」
「そう、県庁があるね」
そこのというのだ。
「丁度あそこには今屋台はないしね」
「じゃああそこにですね」
「出せばいいよ、どんなに美味くても」
そのラーメンがというのだ
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