暁 〜小説投稿サイト〜
星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
敢闘編
第五十話 第五次イゼルローン要塞攻略戦(中)
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
帝国暦483年11月21日06:00
イゼルローン回廊、イゼルローン要塞近傍、銀河帝国軍、ヒルデスハイム艦隊、
旗艦ノイエンドルフ、艦隊司令部
ジークフリード・キルヒアイス

 上官に人を得る、というのがこんなにも有難い事だとは思わなかった、とラインハルト様は仰った。
「今までが今までだったからな。伯は有能ではないかもしれない、でも無能では無いし有為の人だろうな」
やはり環境が変わって初めて目覚める事もあるのだ、という事だろう。伯がそうだった様に、ラインハルト様も少し変わった様な気がする。
アンネローゼ様をお助けするために抱いている志は今でも変わらない。しかし大貴族、門閥貴族と呼ばれる人達に直に接する─それも補佐という形で─様になって、今までと違う人の見方をするようになってきた様に思える。
「確かに多くの貴族は無能だろう、だが全てが無能とは限らない。特に大貴族はそうだ。よく考えれば帝国の中枢に近い所にいるのだ、それで陥れられずに権勢を維持するのは並大抵の事ではあるまい。伯に仕えて初めて解ったよキルヒアイス…敵の事も知らずに姉上を救う夢ばかり見ていたとは…恥ずかしい限りだな」
「敵を知り己を知る…名参謀、ミューゼル少佐の誕生ですね」
「何だと、ハハ…」
そう、我々は敵を知り己を知らねばならないのだ…。

 「考え事かい、キルヒアイス」
「いえラインハルト様、そういう訳では…」
「隠し事はなしだぞ」
「では…敵、叛乱軍は何を目指しているのでしょう」
「決まっているじゃないか、イゼルローン要塞の攻略だろう」
「それはそうなのですが…」
「叛乱軍のイゼルローン攻略後の方針の事を言っているのか?」
「はい。叛乱軍…同盟軍は帝国本土に攻め込むのでしょうか」
「それは…当たり前とは思うが、言われてみれば…考えた事がなかったな」
「イゼルローン要塞が出来て以来、何十年も彼等は攻めあぐねています。そして今日までその図式は変わらない」
「そうだな」
「彼等にとって手段が目的化しているのではないかと思いまして…これは帝国にも言える事ですが、戦争目的を見失っているのではないかと」
「これだけ何度も攻めておきながら…落とした後の事は考えてないと言うのか?」
「はい…考え過ぎかも知れませんが」
ラインハルト様はまさかという顔をしたがそう思えてならないのだ。敵にとってみればまずはイゼルローン、その先はそれから考えればいい…。
「同盟軍の方針は置いておくとしても、我々はイゼルローン要塞が失陥した場合の事も考えなくてはなりません」
「そうだな…正に今その戦いの真っ最中だからな、玉砕という訳にもいかない…俺がのしあがる前に現在の情勢が変わる、という事も考えなくてはならない、という事だな。しかしそんな事を言うなんて、いきなりどうしたんだ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ