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自覚がなくとも
第二章
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「検事としてだ」
「そうしますね」
「罪状も全部認めているしな」
「裁判の席で、ですね」
「それを言うぞ、いいな」
「僕もそれしかないと思います」
 本多は明らかな声で答えた。
「もうそれこそ」
「そうだな、こんな奴はな」
「更正の可能性は皆無で」
「罪を償わせるにはだ」
「死刑しかないですね」
「そうだ、いいな」 
 本多に強い声で言うのだった。
「この事件はだ」
「死刑を求刑しますね」
「そうするぞ」
 こう言ってだった。
 奥田は本多と共に実際にだった。
 裁判の場で死刑にすべきと述べた、だが。
 被告の鳥越広軌、金髪に染めたリーゼントで太い身体に丸い顔を持ち細く険しいふてぶてしい目の少年は平然としていた。
 彼は常にだ、こう言っていた。
「俺は未成年やからな」
「死刑にはならないんですね」
「そや、絶対にや」
 弁護士にも言うのだった。
「そやから平気や」
「あの、反省の意を出さないと」
 弁護士の山井里奈若い女性で黒髪をロングにしはっきりした黒い目と白い長方形の顔をしたスタイルのいい彼女は鳥越に言った。
「どうなっても知りませんよ」
「平気や、それにしても姉ちゃんええ女やな」
 鳥越は忠告する山井に好色な目と声で言ってきた。
「今度俺とどや」
「あの、冗談ではなく」
「死刑になるっちゅうんか」
「どうなっても知らないですよ」
「そやから俺未成年やからな」
「死刑にならないのですか」
「大丈夫や、それに四人殺して前科二十一犯ってどないや」
 鳥越は自分の悪事を誇らしげに話した。
「凄いハクやろ、俺これから物凄い奴になるで」
「反省の意は述べられないのですね」
「そんなん全くないからな」 
 最初から心にはというのだ。
「ええわ」
「そうですか」
「まあ姉ちゃんは仕事頼むで」
 こう言って死刑にならない、少年院に入って終わりで出ればハクが付いてこれからも悪事を為せると思っていた。
 だが。
 裁判官はこの判決を下した。
「反省の色情状酌量の余地なし、よって死刑とする」
「おい、何で俺が死刑やねん」
 鳥越は被告人席から抗議した。
「殺すぞ、お前の家に入って女房と娘犯して殺して金取るぞ」
「何て奴だ」
「あれ本気ですよ」
 奥田も本多も検事の席で忌々し気に呟いた。
「完全に」
「そうだな」
 奥田もその通りだと応えた。
「どう見てもな」
「そうですよね」
「心底屑だな」
「世の中あんな奴もいるんですね」
「どんな悪辣なことをしても平気な奴がな」
「四人も殺してですね」
「全くな、どうせ上告するだろうがな」
 奥田はそうなると見て話した。
「しかしな」
「それでもですね」
「あんな奴はな」
「その上告もですね」

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