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フィンランドから帰国
第一章

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               フィンランドから帰国
 蓮田葉子はこの時日本にいなかった、ロシアという広大な国を挟んだ向こうにあるフィンランドという国に出張をして仕事をしていた。
 面長で色黒で丸い目と小さな唇を持っている。黒髪を後ろで束ねていて背は一五九位で均整の取れたスタイルをしている。 
 その彼女は今妹の菜月から連絡を受けて仰天した。
「えっ、式三日後!?」
「そうよ、言ってなかった?」
「一週間後じゃなかったの、そう聞いて出張したのに」
「そう言われても決まってるのよ」
「お父さんもお母さんもそれで動いてるのよね」
「相手のお家も招待してる人達もね」
「じゃあ私だけ出られないじゃない」
 その日の仕事を終えて滞在先のホテルでサウナに入った後ウォッカを飲みつつ言い返した。
「それだと」
「困ったわね、まあ事情が事情だし」
「出張で外国にいるから」
「フィンランドにね」
 日本から見て遠く離れたこの国にというのだ。
「だったらね」
「仕方ないって言うの?」
「もうここまできたらね」
「そういう訳にはいかないでしょ」 
 姉は国際電話の向こうにいる妹に言葉を返した。
「やっぱり」
「それはそうだけれどね」
「三日後帰国出来るか」
「無理でしょ」
「不可能よ、まだお仕事あるのに」
「じゃあ残念だけれど」
「不可能はないって言ったのはナポレオンさんだったわね」 
 葉子はこの英雄の名前も出した。
「そうだったけれど」
「あの人イギリスにもロシアにも負けてスペインでしくじってるじゃない」
「あと身内にも裏切られてるわね」
「そういう人の言葉だしね」
「世の中不可能ってあるのね」
「じゃあお姉ちゃん巨人優勝させられる?」
 万年最下位しかも勝率一割台でチーム防御率七点台シーズンエラー二百チーム打率二割丁度のこのチームをというのだ。
「無理でしょ」
「私もあんたも中日ファンでしょ」
 故郷で二人が棲んでいる地元のチームのというのだ、葉子は名古屋から出張しているのだ。
「最初からそのつもりはないし」
「あの戦力じゃね」
「出来る筈ないわ」
 絶対にというのだ。
「あんな激弱のカスチームね」
「そういうことよ、だからお仕事頑張ってね」
「何としても行くから」
 それでもだった、葉子はあくまでだった。
 妹の結婚式に参加するつもりだった、それで結婚式場も教えてもらい。
 翌日上司に事情を話してだった、そのうえで。 
 仕事を百二十パーセントの力を出して不眠不休で進めてだった、自分の分は一日半で終えてそうしてだった。
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