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何でも凶器になる
第一章

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                何でも凶器になる
 刑事の吹石直道は今自分が担当している事件について後輩の牧政宗に言った、如何にも中年という皺が出て来た顔で色黒の四角い顔で黒髪を角刈りにしていて口は尖っている。背は一七三以外で腹以外はまだ若い感じだ。
「全く、包丁なんてものはな」
「台所で使えですよね」  
 牧はこう返した、こちらは爽やかな感じで背は一七六程で痩せている。きりっとした目と小さな唇と高い鼻がありその顔立ちと黒く癖のある髪が卵型の顔に似合っている。
「街で振り回すなですよ」
「幸い死人は出なかったがな」
「怪我した人何人もいますね」
「とんでもない奴だ」
「ええ、しかし包丁ってこうした時よく使われますね」
「刃物だからな」
 それでとだ、吹石は牧に答えた。
「もうそれこそな」
「簡単に凶器になりますね」
「そうなんだよ、だから銃刀法があるんだ」
「そういうことですね」
「やばい奴は通報してくれたらな」
「暴れる前にですね」
「俺達が何とかしないとな」
 こんなことを話したのだった、事件の取り調べの合間に。この事件は現行犯でそれはあっさり終わり後は裁判となったが。
 次の事件についてだ、今度は牧から言った。彼は事故現場に落ちている犯行に使われたものを見て吹石に話した。
「悪ガキが遊びで石投げて」
「たまたま通行人の頭に当たってな」
「大怪我ですね」
「結構大きな石だったしな」
 観れば白い石で血が付いている。小学生が使う軟球位の大きさだ。
「こんなの当たったらな」
「大怪我ですね」
「幸い外傷だけで血は流れてるけれどな」
「後遺症はないんですね」
「ああ、しかし石もな」
「これ位大きくて投げて」
「頭にぶつかるとな」
 その時はというのだ。
「凶器になるな」
「聖書のダビデの話もそうでしたね」
「ああ、巨人だって倒せるんだ」
 吹石も応えた、そして今度はあるマンションで夫婦喧嘩が行われ夫婦は両方共相手に怪我をさせて御用となったが。
 事故現場の自宅でだ、牧は妻が夫を殴った酒瓶を見て言った。
「ウイスキーのボトルか、これは効くな」
「旦那さん血だらけでしたしね」
「奥さんも思い切ってやったな」
「こんなので殴るなんて」
「旦那さんもな」
 今度は夫の方を話した。
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