第二部 1978年
ソ連の長い手
崩れ落ちる赤色宮殿 その4
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絶妙の剣技で攻め立てた老チェキストの亡骸から銃剣を引き抜くと、周囲を見渡す。
興奮が醒めて来たマサキは、恐る恐る左肩を見る。
強烈な一撃を喰らうも、背負紐の金具によって裂傷は防げた模様。
だが痺れるような痛みが、左手の指先まで広がって来るのを実感した。
小銃を負い紐で背中に回した後、右手でぐっと抑える。
左肩の傷は段々と痛みを増して来て、下に着ている肌着を滲み出る汗が湿らせる。
額から流れ出る汗を拭う事もせずに、マサキは並み居る赤軍兵を一瞥。
右手をベルトのバックルに当てると、眩い光とほぼ同時に衝撃波が広がっていく。
咆哮を上げ、吶喊してくる赤軍兵士をなぎ倒すと、光はマサキを包んだ。
光球は素早く移動し、ゼオライマーの元に向かった。
ゼオライマーの操縦席に転移したマサキは、背負っていた自動小銃を脇に投げ出す。
左肩を押さえ、やっとの思いで背凭れに座り込むと同時に合図した。
「美久、出力80パーセントでメイオウ攻撃を仕掛ける」
彼は、操作卓のボタンを右手で手早く連打する。
「了解しました」
ゼオライマーの手の甲に付いた球体が光り輝き、周囲を照らす。
次元連結システムを通じて、異次元空間よりエネルギーが集められ始まる。
力なく垂れ下がっていた機体の両腕が、勢い良く肩の位置まで上がった。
市街地より濛々と土ぼこりを舞い上げ、勢いよく前進して来る40機余りの集団。
噴射地表面滑走で、先頭を走るは、黒色の見慣れぬ戦術機。
恐らく試作機か、新型機であろうか。後方よりMIG-21を引き連れ、突進してくる。
件の機体は、ずんぐりむっくりとしたMIG-21バラライカとは違い、ほっそりとしている。
各部の意匠や全身が角ばった装甲板が配置された外観は、従前のバラライカとは大きく異なった。
刃の切っ先を思わせる様な鋭い面構えに、ソ連技術陣の期待の高さを伺わせる。
轟々と空より、響き渡る跳躍ユニットの音。
西の方角より匍匐飛行で、80機余りの灰色の塗装の施されたMIG-21が現れた。
右肩に大きく描かれた赤い星……、ソ連赤軍を示す国家識別章。
左肩に書かれた連隊番号がバラバラな所を見ると、残存部隊の寄せ集めだろうか。
横一列に隊列を組んで、段々と低空飛行で接近してくるのがレーダーで確認できた。
如何に多数の戦術機を運用するソ連赤軍とはいえ、今回の損失は如何ばかりであろうか……
ふとマサキは思ったが、この手で消し去る存在。どうでも良くなった。
「かかれ!奴はたった一機だ。我がソビエトの為に打ち取れ」
檄を飛ばしながら、突撃砲を唸らせ、近づいて来る。
隙間なく降り注ぐ弾丸の雨が、ゼオライマーを覆う。
背部兵装担架に懸架している二門の突撃砲も含めた計四
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