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干し無花果
第一章

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                干し無花果
 アケメネス朝ペルシャの都クセノフォンにおいてであった。
 黒い見事な顔の下半分を覆う見事な長い髭を生やし豪奢な服を着た黒髪の王クセルクセス一世は夕食の席に着いていた、そうしてだった。
 美酒に馳走を楽しんでいた、そこでだった。
 王の前に給仕の宦官の一人が見事な皿の上に干し無花果を置いて持って来た、その無花果を食べてだった。
 王は満面の笑顔になりこう言った。
「うむ、実にだ」
「美味しいですか」
「そうだ、無花果はそのまま食しても美味く」 
 そうしてというのだ。
「干してもだが」
「この干し無花果は絶品でして」
 宦官は王に恭しく答えた。
「それで、です」
「余にか」
「市場で買ってこちらに出しました」
「これを売った商人に」
 王は微笑み述べた。
「美味なものを食させてくれたからな」
「それでは」
「そして聞きたい」 
 王はさらに言った。
「この干し無花果はどの産か」
「アッティカです」
 宦官は即座に答えた。
「そちらの産です」
「そうか、あちらか」
「左様です」
「では何処から来た」
 王はさらに問うた。
「産はわかったが何処から来た」
「アテナイです」
 宦官はまた答えた。
「あちらです」
「アテナイか」
「あの街からです」
「そうか、アテナイか」
「そうですが」
「わかった、アテナイの者達は見る目があるな」
 王は考える顔で述べた。
「実に」
「これだけの無花果を持っているので」
「アッティカで買ってな」
「そういえばあの街は豊かで美味いものも多いとか」
「それでだな、ではだ」
 王はさらに言った。
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