暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
ソ連の長い手
燃える極東 その1
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一説には、小型核を装備した大型戦術機との噂を聞いたほどだ
日本野郎(ヤポーシキ)共が作った大型機(マシン)……、どの様な物であろうか
撃破すれば、十分な解析も出来よう
 跳躍ユニットの推進装置を吹かしながら、滑走路上で匍匐飛行の準備を取る
勢いよく離陸すると、揺れる座席の中で静かに神に祈った


 (よい)の口、市街地に向かって飛ぶ40機余りの戦術機の編隊
市内で立ち竦むゼオライマーの姿を一瞥すると、手に構えた突撃砲が呻らせた
暗闇の中を標的目掛けて雨霰と砲弾が降り注ぐ
曳光弾が、まるで一条の光が線を引くかのごとく駆け抜けていった
 市街地の大半は、既に火の手が回り、列をなして逃げ回る避難民の群れが道路を埋めていた
乗り捨てられた乗用車やバスを気にせず突っ込んできた戦車隊は、所かまわず盲射する
唸り声をあげながら火を噴く、重機関銃
彼等は、ゼオライマーではなく市民に向けて発砲したのだ
斃れた市民を踏みつける様にして、戦車隊は市中へ前進する



 東部軍管区ビルの屋上に、やっとの思いでたどり着いたマサキ達
その場所より市街の混乱する様を、弾薬納より取り出したダハプリズム式の双眼鏡で眺めていた
思わず、ふと苦笑を漏らす
退避する市民が居てもお構いなしに対空機関砲や突撃砲を連射するソ連軍……
 前世に於いて、富士山麓でゼオライマーに乗り、八卦ロボと戦った時を思い起こす
敵の注意を引くために避難民が居る中で戦闘をしたことがあった
自分も決して他者の人命を尊重する方ではないが、この様には他人事とは言え、呆れ果てた
 
 飛び交う弾丸に身を屈めながら、彼は周囲を伺う
砲声はいよいよ近くなって、時々思いもかけぬ場所で炸裂する音が響き渡る
盲射するソ連赤軍の弾は、間近に落ちてきている
何れは、ここにも着弾しよう……
脇に居る鎧衣に、声を掛けた
「茶番は終わりにするか……、ここから飛ぶぞ!」
男はその様な状況の中で顔色一つ変えず、マサキの方を伺う
手早く双眼鏡を弾薬納に戻したマサキは、顔を上げて脇に居る鎧衣を一瞥する
頭から粉塵を被りながらも、身動ぎすらしない……
思い出したかのようにひとしきり笑った後、こう告げた
「ソ連赤軍の包囲網の中央を踏破するか……、久しぶりに沸々と血が(たぎ)る」
つられるようにして彼も哄笑する
「貴様には、こんなしみったれた場所で野垂れ死にされては困る。
俺を玩具にしようとしている馬鹿共……、例えば将軍や五摂家、武家。
奴等にゼオライマーの恐ろしさを余すところなく伝える義務があるからな」
 彼はそう言うと、ズボンのベルトに手を掛けた
ベルトのバックル部分に内蔵した次元連結システムの子機から光が広がる
閃光と共に彼等の姿は一瞬にして消え去った

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