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カミソリシュート
第五章
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「気が強いのはわかっていたけれどな」
「また今日は極端だったな」
「本当に凄かったな」
「あれには参ったな」
「しかしあれでいいんだよ」 
 星野は飲みながら語った。
「ピッチャーはな」
「あそこまで気が強くないとか」
「やっぱり投げか」
「ヤジに怒ってあそこまでする」
「そうじゃないとか」
「駄目なんだな」
「そうだ、だから俺は平松に何も言わない」
 ベンチにボールを投げたことについてというのだ。
「一切な」
「そうなんだな」
「そうするんだな」
「むしろいいって言ったな」
「あそこまでじゃないとってな」
「さもないとやっていけないさ」 
 こうも言うのだった。
「マウンドでな、ましてプロでエースだとな」
「尚更か」
「やっていけないか」
「そうなんだな」
「俺もプロでエースだからな」
 中日のそれであるからだというのだ。
「わかるつもりだよ、ただ俺もな」
「ああ、センさんもな」
「マウンドで燃えてヤジっても」
「相手のベンチにボールは投げないな」
「流石にな」
「あれには参ったな、しかしあそこまでやってこそだな」
 プロのチームのエースだとだ、星野は言うのだった。
 平松はその後で二百勝を達成したうえで引退した、その後で星野と飲んだことがあったが同じ年生まれでも早生まれの星野は彼に笑って話した。
「お前あそこまでやったからな」
「札幌で、ですね」
「俺のヤジに怒ってうちのベンチに投げてきただろ」
 一緒に飲んだ時に笑って話した。
「あそこまでやったからだよ」
「エースでいられたっていうんですね」
「二百勝も出来たんだよ、ベンチに投げた後もシュートどんどん投げたな」 
 ヤジったその決め球をというのだ。
「何糞ってな」
「いつもそんな気持ちでしたよ、ピッチャーですから」
 だからだとだ、平松は星野に返した。
「もうです」
「ヤジられるとな」
「そのボールで討ち取ってやると」 
 そう考えてというのだ。
「それこそですよ」
「次から次にだよな」
「投げて」
 そうしてというのだ。
「抑えるものですよね」
「そうだよ、全く同感だよ」
 星野は平松のその言葉に笑って応えた。
「俺もピッチャーだからな」
「わかりますよね」
「ああ、お前はそうした奴だからな」
「エースでいられてですね」
「二百勝出来たんだよ、じゃあ今日は飲んでな」
「あの時のことをですね」
「他のこともな」
 札幌の時だけでなくというのだ。
「話そうな」
「そうしましょう」 
 平松も応えた、そうして二人が現役の時昭和の野球のことを話していった。ヤジを出してボールを投げた二人だが今は楽しく共に飲んでいた。


カミソリシュート   完


       
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