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オレンジの娘
第一章

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                オレンジの娘
 アルバニアの古い話である。
 ある家で夫婦と息子の三人が暮らしていた、一家は仲良く暮らしていて。
 美味しいもの特にオレンジを好んでいた、それでこの日も母親はオレンジを市場で買い込んできたが。
 そのオレンジの山を見て父親は妻に言った。
「また随分とな」
「買ったっていうのね」
「ああ、幾ら買ったんだ」
「二キロよ」
 中年の妻は自分よりやや年上の夫に答えた、二人共髪の毛も目も黒で息子の髪の毛と目の色も同じだ。
「安かったからね」
「だからか」
「それだけ買ったのよ」
 二キロもというのだ。
「それじゃあ晩にね」
「ああ、デザートにだな」
「それにおやつでもね」
「食っていくか」
「そうしましょう」
 こう話してだった。
 息子も入れて一家でオレンジを食べていった、三人共オレンジが好きであっという間になくなっていき。
 残り二つになった、その二つのうちの一つをだ。
 一家の夕食の後で食べようと思い母親が取ろうとした時にだった。
「あの、食べないで下さい」
「オレンジが喋ったぞ」
「そうだね」
 父親も息子もその声を聞いて言った。
「今ね」
「そうだな」
「オレンジが喋るなんてはじめてよ」
 母親もいぶかしんだ。
「どういうことかしら」
「そのオレンジは食わない様にしよう」
 父がこう提案した。
「だから残った方をな」
「こっちを食べて」
「喋ったオレンジは様子を見てな」
「置いておくのね」
「そうしよう」
「わかったわ」
 妻も頷いてだった。
 そうして喋ったオレンジは置かれた、すると。
 オレンジは日に日に大きくなってだった。
 小さな女の子位の大きさになった、それでどんどん喋る様になり。
「扉開けますね」
「お掃除しますね」
「お料理もしますね」
「手や足もないのに」
 一家の息子はそんなオレンジを見て首を傾げさせた。
「家事も出来るんだ」
「はい、私は」
「喋るだけじゃないんだ」
「そうなんです」
「オレンジの実なのにずっと腐らないし」
 息子はこのことも話した。
「それに喋って家事も出来るなんて」
「不思議ですね」
「とてもね」
 まだ子供の息子はオレンジに答えた。
「全く以てだよ」
「そうですか、では私はです」
「そうしたオレンジなんだね」
「左様です」 
 こう答えてだった。
 オレンジは一家の働き手の一人となった、一家はそのオレンジと幸せに凄し彼女を大事にしていたが。
 オレンジの話は国中で噂になった、それでだった。
 国の跡継ぎである王子、眉目麗しく勇敢で聡明なことでも知られている彼がこの一家の家に来てだった。
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