暁 〜小説投稿サイト〜
猛練習
第五章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後
「田中先生は大丈夫だな」
「はい」
 教頭が校長に答えた、教頭は痩せた白髪の初老の男だ。
「普通にです」
「部員を指導しているな」
「部員の問題ある行動に怒りはしますが」 
 それでもというのだ。
「あまりにもハードな練習ではなく」
「普通にか」
「していて暴力もです」
「振るわないか」
「異様な縛りもなく練習中水分もです」
「摂らせているか」
「そして部員一人一人を大事にしています」
 そうしているというのだ。
「代わりは幾らでもでなく」
「全国大会を目指す等もな」
「言っていません、生徒の人間性を育てることをです」
 一人一人のそれをというのだ。
「大事にしています」
「いいことだな」
「部活は平和になり生徒の顔も」
「よくなったか」
「明るいものになりました」
 そうなったというのだ。
「以前はテスト前でも部活をやっていましたが」
「剣道部だけはな」
「それもなくなり」
「成績も上がったな」
「平穏先生はそれで成績の悪い生徒を馬鹿にしましたが」
「田中先生はそれもないな」
「はい」
 そうだというのだ。
「全く別の部活になりました、どうも平穏先生は本当にです」
「全国大会を目指したのはな」
「それをさせた顧問としてです」
 その立場になりというのだ。
「名声と評価を得て」
「県内の剣道界での地位とだな」
「そして教育界の中で」
 そこでもというのだ。
「やがては」
「権力をか」
「そう考えていた様で」
「だろうな。さもないと生徒の代わりが幾らでもとは」
「言いませんね」
「彼にとって生徒は自分の道具だった」
 校長は言い切った、それも忌々し気に。
「自分の地位と権力の為のな」
「だから無理な練習をさせていましたね」
「そうだった、しかしな」
「それがですね」
「潰えた、もう彼は終わりだ」
 職も地位も評判も失い引き籠る様になってというのだ。
「生徒に自分の為に猛練習をさせ縛りをかけたが」
「それもですね」
「出来ない、そして人間としてもな」
「終焉を迎えましたね」
「そうなった、だからな」
 それでというのだ。
「彼のことはいい、ただだ」
「もう彼の様な教師が出ない」
「そうしなけれだな」
「生徒を育て正しく導くことが我々の仕事です」
「間違っても自分の駒にしてはならない」
「全くですね、ではそのことを肝に銘じて」
「これからも生徒を育てていこう」
 教育者としてだ、こう言ってだった。
 校長は教頭と共に校長室の窓の外を見た、放課後なので多くの生徒達が部活に励んでいた。
 そこには剣道部の生徒達もいた、見れば彼等は明るい顔で走っていた。校長は教頭と共にその笑顔を見てあの笑顔を守っていこうとも誓ったのだった。



[8]前話 [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ