第一章
[2]次話
猛練習
平穏和博はその中学校に赴任して剣道部の顧問になることが決まった瞬間に校長である孫大二郎に豪語した。
「剣道部を必ずです」
「強くするんだね」
「はい」
校長に強い声で答えた、見れば。
一八〇近い背で丸々と太り色黒で目は細く剣呑な光が宿っている。黒髪をパーマにしており身体の動き一つ一つが教師というよりならず者のそれだ。
「そうしますので」
「期待していいのだね」
「全国大会も」
それもというのだ。
「出ます」
「全国のかい」
「生徒を鍛えますから」
だからだというのだ。
「いけます、ですから」
「だからか」
「期待していて下さい」
「そこまで言うなら」
バーコード頭で痩せて面長の顔の校長は応えた。
「君に剣道部を任せるよ」
「必ず強い剣道部にします」
こう校長に言って早速だった。
彼は剣道部に入ると生徒達に告げた。
「お前等は俺の言う通りにしろ」
「はい」
「わかりました」
生徒達は素直に応えた、まだ中学生なのですれた者は少なくかつ平穏が大柄で竹刀を持っていることから怖そうだと思いそうした。平穏はその彼等にさらに言った。
「練習もだ、そうすれば全国大会だ」
「全国大会!?」
「俺達がですか」
「出られる、だから俺の言う通りにしろ」
こう言ってだった。
彼は生徒達にその日から練習をさせた、その練習は。
「一日ランニング五キロか」
「それも毎朝、雨でもか」
「これまで朝練はな」
「軽くだったのにな」
「それが五キロか」
「夕方も走るんだな」
朝だけでなくというのだ。
「それでサーキットもしてか」
「素振り千回か」
「しかも土日も部活か」
「土日か朝から夕方までか」
「メニュー陸上部並だな」
「野球部やサッカー部より凄いぞ」
この中学で練習が厳しいことで知られているこの二つの部よりもというのだ。
「防具付けての稽古も凄いな」
「これまでの倍だな」
「昼休みも練習なんてな」
「部活の時間滅茶苦茶長くなったな」
「夜までやるしな」
「厳しくなったな」
「本当にな」
生徒達はぼやいた、彼等は猛練習の中に放り込まれた。
練習の間は水やスポーツドリンクを飲むことを許されず。
平穏はいつも見ていてだ、少しでも遅れている生徒がいるとその生徒を防具を付けていない状態でも竹刀で叩いた。
「何をやっている!」
「手を抜くな!」
「たるんでいるぞ!」
「気を抜くな!」
「ぼさっとするな!」
叩き蹴る、そして。
言葉で叱る時はだ、鬼の顔で言った。
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