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星河の覇皇
第八十一部第二章 軍事の素養その三十五

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「誰もだ」
「その様なことはですか」
「ない」
 一切という言葉だった。
「それはな、そもそもだ」
「そもそもとは」
「エウロパは階級はあるが」
 これは確かに存在するがというのだ。
「人権はな」
「保障されていますね」
「貴族が平民を害するとな」
 その場合はというのだ。
「平民同士のそれよりもだ」
「厳しいですね」
「階級が上だというのにだ」
「下の者を虐げることはですか」
「貴族にとってあるまじき行いだ」
 こう考えられているからだ。
「貴族は貴族であり無頼漢ではない」
「決してですか」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「それが故にだ」
「法律でもですね」
「そう定められていてだ」
「旦那様もですか」
「君達に何かをすることはな」
 家族単位でというのだ。
「有り得ない」
「そうですか」
「何があろうともな、それでだが」
 マールボロは今度はこう言った。
「君の弟さんは今度高校に入学するな」
「はい」
 その通りだとだ、メイドはマールボロに答えた。
「この度」
「ならだ」
「それならですね」
「そうだ、是非だ」
 まさにと言うのだった。
「私にもお祝いをさせてくれ」
「宜しいのですか」
「君の弟さんも将来当家で働くな」
「そうなりますね」
 その通りだとだ、メイドも答えた。
「当家は代々マールボロ家にお仕えしていますので」
「そうだな、ならな」
 それならと言うのだった。
「私からもだ」
「やがてお仕えするからですか」
「お祝いをさせてもらう」
 是非にと言う返事だった。
「そしてこれからもな」
「学業にですね」
「励んでもらいたい」
「弟にも伝えておきます」
「その様にな」
 マールボロはメイドに笑顔で述べた、そしてメイドは勤務時間が終わると家に帰ったがその時にだった。
 弟にだ、マールボロが言ったことを伝えると弟はこう言った。見れば大柄でいかつい顔立ちをしている。
「悪いね、何か」
「悪いって何が?」
「旦那様にそうしてもらえるなんて」
 その岩の様な顔で言うのだった。
「悪いよ」
「そう言ってもよ」
「旦那様がなんだ」
「そう言って下さるから」
 それでというのだ。
「ここはね」
「受けるべきなんだね」
「そう、折角のご好意だから」
 遠慮せずにというのだ。
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