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猫とツーリング
第一章
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                猫とツーリング
 マーティン=クラウカ黒い髪と広い額、顎からつながる顎鬚と薄めの口髭を生やした彼は仕事を辞めてだった。
 バイクで一人旅に出ていた、モロッコの喫茶店で英語を喋ることが出来る親父に今は英語で話をしていた。
「自由にかい」
「旅をしようと思ってなんだ」
 クラウカはカウンターでコーヒーを飲みつつ親父に話した。
「それでなんだ」
「仕事を辞めてなんだな」
「旅をはじめたんだ、お金は今はあるしな」
「それがなくなったらどうするんだい?」
「実はドバイにつてがあるんだ」
 笑ってだ、クラウカは親父に答えた。
「だからそこで仕事に就いて」
「稼ぐんだな」
「それでまたお金が出来たら」
 その時はというのだ。
「旅をするさ、今はここや地中海の方を巡ってるけどな」
「今度は他の国にかい」
「行きたいな、インドとかパキスタンとかな」
「そうした一生もいいかもな」
「そうだろ」
「ああ」
 店でこうした話をしてだった。
 出るとだ、その前で。
「ニャ〜〜〜」
「猫か、まさか」
 クラウカはそこに子猫、黒い毛で顔は黒と白の八割れの雄猫がいるのを見た、それでその猫を抱いて店に戻って親父にこの店の猫かと聞くと。
「野良だよ、最近この辺りにいるんだ」
「そうなのか」
「母猫は車に撥ねられてな」
「死んだんだな」
「兄弟は皆それぞれもらわれていったけどな」
「ムスリムの人が多いから猫は大事にするんだな」
「ただうちは女房が猫アレルギーでな」
 親父はこのことは残念そうに話した。
「だからな」
「それでか」
「今知り合いに一匹残ったそいつの話をしようと思ってたんだが」
「そうか、じゃあな」
 ここでだった。
 クラウカは猫と目が合った、すると自然と離れられないものを感じ親父に言った。
「俺が一緒にいていいか?」
「いいけどあんた旅をしてるだろ」
「それでもだよ、何か縁を感じてな」
 それでというのだ。
「一緒にいたくなったんだ」
「そうか、じゃあ大事にしてくれよ」
 親父は二つ返事で応えた、そうしてだった。
 猫をモーグリと名付けて旅を再開した、安全に配慮してバッグを改造してモーグリが安全に入って顔を出せる様にしてだった。
 一緒にいられる様にした、そのうえで。
 バイクで旅をしたが。
「猫と一緒だとか」
「泊めてくれないホテルや入れてくれない店もあるさ」
 ドバイに入って仕事と住むところを紹介してくれた知人に話した、一旦旅を終えてそこでの生活の糧と旅の資金を稼ぎだしている。
「けれどな」
「それでもか」
「ああ、モーグリと一緒ならな」
 彼を抱きつつ話した。
「何処でも楽しいよ、キャンプ地に入るとあちこち歩き回るし」
「猫は
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