第八十一部第二章 軍事の素養その三十
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「サハラでな」
「ええと、オムダーマンがですか」
「ティムールに勝った」
丁度そのニュースが放送されていた。
「これはだ」
「大きなことですか」
「これで決まった」
何が決まったかも言うのだった。
「サハラの統一がな」
「そうなのですか」
「オムダーマンが統一する」
こう言い切った。
「これからな」
「そうなるのですか」
「これは只の一勝ではない」
何時しかスコッチを飲む手を止めていた、そのうえでの言葉だった。
「そこから先にだ」
「今両国は戦争をしていますが」
「その戦争をだ」
それ自体をというのだ。
「決める」
「そうしたものなのですね」
「そうだ」
「私は軍事のことは」
観れば二十代前半位の若いメイドだ、メイド服に着られて感じも初々しさが残っている。
「わからないですが」
「それはな、メイドならばな」
「このお仕事にですね」
「専念することがな」
「務めですね」
「私は家事は出来ない」
マールボロは笑ってこうも言った。
「軍隊と政治しか知らない」
「そうだと言われますか」
「実際にそうだしな」
この二つの世界しか知らないというのだ。
「そう思うとな」
「家事についてはですか」
「全くの無能だ、料理も掃除も洗濯もな」
そうしたことはというのだ。
「しようとしてもな」
「出来ないと、ですか」
「それどころかな」
苦笑いを浮かべてだ、こうも言うのだった。
「到底だ」
「出来ないですか」
「そうだ」
実際にというのだ。
「軍隊では特にだった」
「そうしたことは」
「従兵がいつも何かとしてくれた」
エウロパ軍では将校には必ず一人はつく、それで彼等が何かと身の回りの世話をしてくれるのだ。将官になれば専属のコックもつく。
「靴磨きもだ」
「それもですか」
「私は士官学校からな」
エウロパでは従兵はこの時からつくのだ、執事の役割もしてくれる。
「そうだったしな」
「だからですか」
「本当に何もだ」
軍事や政治以外のことはというのだ。
「したことがなくだ」
「今もですか」
「出来ない、若し私が一人だとだ」
そうなると、というのだ。
「生きることすらだ」
「出来ないですか」
「そう確信している」
自分自身でというのだ。
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