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銀河を漂うタンザナイト
アスターテ星域会戦B
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帝国軍遠征艦隊旗艦 戦艦ブリュンヒルト 艦橋 

「敵艦隊は包囲網を突破、脱出しました」
「そのようだな」
「はい、追撃なされますか?」

キルヒアイスの報告を受けてラインハルトは憮然としながら答えた。

「無駄だ、あれでは追撃したところで追いつくまい。提督たちにも追撃は不要と伝えておけ。それよりも今は他の敵艦隊をどうするかだ。このまま放置しておいては危険だからな」
「はい、今なら容易に撃破できましょう」
「そうだな、だが……」
「何か気になることでもおありでしょうか」
「いや、なんでもない。ところでキルヒアイス、お前は第2、第6の敵艦隊の内どちらを攻撃すべきだと思う?」
「そうですね。やはり兵力の少ない第6艦隊から攻撃すべきかと考えます、接敵まではおよそ約4時間弱かと」
「コイツめ、もう考えていたなっ」
「はい、すみません」

ラインハルトはからかうように言葉を発した。彼の表情にはキルヒアイスの反応を楽しむ雰囲気があった。それに対しキルヒアイスは微笑みながら素直に謝るとさらに言葉を続けた。

「それに第2艦隊と第6艦隊が合流するまで、まだ少し時間がかかります。その間に少しでも敵の戦力を削いでおくべきでしょう」
「確かにな。よし、分かった。次は敵第6艦隊を攻撃する。各艦に伝達してくれ」
「かしこまりました、ところでラインハルト様、一つよろしいでしょうか?」
「何だ、ほかに何かあるのか?」
「接敵までまだ4時間はあります。兵士たちに1時間の休憩を与えてタンクベッドの使用を許可すべきかと具申いたします…」
「そうだなキルヒアイス、兵士たちには1時間休憩を取らせよう。お前から伝えてくれ」
「分かりました」

キルヒアイスは敬礼しラインハルトの命令を伝えるべく、通信士官のもとへ急いだのだった。


宇宙歴796年/帝国歴487年2月 アスターテ星域  同盟軍第4艦隊臨時旗艦 標準型戦艦リューリク 艦橋

「前方に艦影確認、数はおよそ15000隻ほどと思われます。識別信号確認、帝国軍ではありません!第2艦隊です!」
オペレーターから報告が入ると、クロパチェクはほっと溜息をついた。

(これでひとまず安心だな)

彼は、心の中に浮かんだそんな言葉を噛み締めた。先刻の戦闘でパノフ准将が重傷を負い、その結果指揮系統の空白が生じて艦隊が混乱するのをよしとしなかったパノフ准将により指名された彼は、パノフ准将の代わりに一時的に艦隊の指揮をとる羽目になったのだがこれは彼に取ってなかなかの難問だった。元々、彼は士官学校を次席で卒業するほどの秀才だったがパノフ准将ほどの名声と経験はなかった。そのため、艦隊運用に関しては医務室で治療を受けているパノフ准将の指示を仰ぎつつ、臨機応変に対応していた。しかし、この状態がい
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