暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第三部 1979年
孤独な戦い
月面降下作戦 その3
[1/6]

[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話
 かつて、七つを海を支配した大英帝国。
昔日の栄光さえも信じられぬほど衰微し、僅かな支配地を残すばかりとなった。
 だが全世界に張り巡らされた情報網は、旧植民地を始めとして、いまだ健在であった。
モルディブは英国より独立はしたが、依然、英連邦の構成国であった。
故に、マサキ達が会場にしたホテルからの情報は、政府中枢にそのすべてが伝わっていた。

「日ソの急接近は、ゼオライマーという超マシンを共産圏に売り渡すことになる。
ソ連が超マシンの量産化に成功した暁には、月面はおろか、火星に赤旗が翻る。
悪夢のような事態は、何としても、阻止せねばならない!」
「……しかし、総理。
それはゼオライマーを過大評価していると思うのですが……
現在の日本政府に、それほどの科学技術はないと思います。」
 
「そりゃぁ、ハイヴの一つ、二つは攻略できるでしょう。
……ですが、惑星の一つを攻略することは無理かと……」
「イスラエルの諜報機関(モサド)は、そうはいっておらん!」
そう言って、テルアビブからの報らせを机の上に放り投げた。
「ゼオライマーを世界最強のマシンと評価している。
とにかくその操縦士の男、木原マサキは、無敵の人物とだとも言ってきている」
 モサドの報告によるメイオウ攻撃の強大さを、大いに怖れて動揺した。
首相の怒りは、極度にたかぶった。
「昨日の友は今日の敵とも成りうる。
やはり木原マサキという男はこの世に存在しない方が良い。
日ソ会談をつぶすと同時に、始末しなさい」
痛嘆を飲んでいるものの如く、情報部長はただ首相の血相に黙然としていた。

 情報部長は、マサキ討伐の任をうけ、密かにバッキンガム宮に上って、国王を拝した。 
そして国王は、人払いをした所で、初めて口を開いた。 
「情報部長、木原については、どうなっているのかね」 
「パレオロゴス作戦の後、西ベルリンの情報員が、しきりと変を伝えてきました。
それによると、東ドイツの議長は、旧怨を捨て、自分の娘を木原の妻として嫁がせたそうです。
その婚姻の引出物に、秘密資料(シュタージファイル)の大半も、木原に渡したということです」
 国王は行政に関して決定権は持っていなかったが、意見を述べることは権利として認められていた。
国王の意見は政治的な裏付けはなかったが、場合によっては議会を通り越して閣僚たちの判断に影響することがあった。
 それゆえ、情報部長は、国王の意見をもって、英国政府を動かすことに決めたのだ。
マサキの力を警戒したほうが賢明ではあるまいかと、思うところを述べた。
「要するに、日独、二者の結合は、当然、わが英国へ向って、何事か大きな影響を及ぼさずにはいないものと……
ダウニング街においても、みな心痛のまま、お達しに参りました」
「な
[8]前話 前書き [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ