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博打打ち
第四章

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 怪訝な顔になってだ、そのうえで尋ねた。
「お金借金じゃないわよね」
「それだとこんな明るく言えるか」
「だったら」
「・・・・・・悪いな」
 滝本は頷いて返した。
「それはな」
「そうなのね」
「ああ、そうしてだ」
「お金用意してくれたのね」
「お前との約束破った」  
 自分でこのことを認めた。
「そうした」
「そうよね」
「悪いな」
「ええ、けれどね」
 それでもとだ、琴は兄に言った。
「お兄ちゃん私の為にそうしたのよね」
「それでもな」
「自分の為じゃないから」
「だからか」
「もう二度として欲しくないけれど」
 琴は言葉を続けた。
「けれど今回だけは有り難う」
「そうか」
「うん、お陰で私は助かったから」
 自分の命、それを救ってくれたからだというのだ。
「本当にね」
「もう二度としないな」 
 滝本は妹に約束した、そして実際にだった。
 以後彼はギャンブルはせず真面目に工員として働いた、そして妹が大学に入る頃に職場で知り合った妹より何歳か年上の気立てのいい娘と結婚した。
 そうして幸せな家庭を築いた、だが彼は知らなかったがそちらの世界では伝説があった。
「あいつはそうなったんだ?」
「伝説の博打打ちだったんだがな」
「兎に角強かったが」
「今何処にいるんだろうな」
「ラスベガスでも行ったか」
「モナコかも知れないな」
「生きてるのかどうかもわからないな」 
 彼のことを話した、そうしてだった。
 その行方について考えた、その彼と擦れ違っても気付く者はいなかった。それが噂の人物であると。子供を抱いて妻や妹彼女の家族と幸せに暮らしている彼が。


博打打ち   完


                 2021・12・18
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