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大衆の正義
第三章

[8]前話
 彼等は犯人に名乗り出た場合逮捕するが証拠不十分なので不起訴となるということを言った、するとだった。
「ああ、不起訴か」
「不起訴になるならな」
「それならいいさ」
「じゃあ名乗り出るか」
「そうするか」 
 群衆にいた者達が続々と名乗り出た、そして。
 彼等に一応小西に何をしたのか事情聴取をすると。
「殴りましたよ」
「蹴りました」
「もう適当に」
「頭にきてたんでボコボコにしました」
「けれど何処を殴ったか」
「何処を蹴ったのか覚えてません」
「俺があいつ殺っちゃいました?」
 わからないという返事だった。
「一体」
「けれど証拠ないですよね」
「じゃあいいですよね」
「不起訴って約束ですし」
「それで出頭しましたし」
「別にいいですよね、それで」
「話すこと全部話しましたし」
 こう言ってそうしてだった。
 彼等は全員証拠不十分で不起訴となった、これは警察の言う通りだった。
 だが警察にいる者達は難しい顔で言った。
「これが怒り狂った群衆の恐ろしさか」
「大衆の正義か」
「恐ろしい力だな」
「警察ですら止められないとは」
「悪人にはここまで容赦しないのか」
「このことは覚えておかないといけないぞ」
「またこんなことがあってはならない」
 彼等は深刻な顔で話した。
「日本は法治国家だ」
「幾ら怒っても法律は守られるべきだ」
「死刑囚は死刑にすべきだ」
「リンチで殺してはならない」
「だが群衆の怒りは法律も超える」
「憎しみはそこまで恐ろしい」
「二度とこんなことがあってはならない」
「警備はより厳重にしよう」
 こう話した、そして司法の方もだった。
「裁判と死刑の執行に時間がかかる」
「その結果犯人をより長く税金で養うことになる」
「今回はそのことも怒りを買った」
「だからああなった」
「裁判と死刑の執行まで迅速に使用」
「そうなる様にしよう」
 こう話してだった。
 警察だけでなく司法も改善すべきところは改善することにした、だが。
「あんなことは二度とあってはいけない」
「幾ら凶悪犯とはいえ日本は法治国家だ」
「リンチによる殺人は絶対に起こしてはいけない」
「正義といってもそれは暴力で無法だ」
「どちらも二度と絶対に許してはいけない」
 このことも誓われた、そうして裁判と死刑執行までの時間が短縮化されると共に容疑者の警護も厳格化された。大衆の正義から学ばれたことは非常に大きく多かったと言えた。


大衆の正義   完


                2022・1・18
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