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少女は 見えない糸だけをたよりに
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 出発当日、お父さんはポロシャツに麻のジャケットで、私は、そんな服装、初めて見た。私は、ワイドパンツにベストジャケットを着ていた。お姉ちゃんに選んでもらったものだ。

 船から島に降りたのは、お昼過ぎだった。船に乗る前に、食堂で、刺身定食を済ませて、お花を用意していた。昔、過ごしたお店は板で覆われていて、そのまんまの姿だった。でも、もう、誰かのものなのか、入ることも出来なかった。そこから、少し、坂道を登って、藤原家のお墓のある場所に・・

「お父さん ごめんなさい あと、少しですから」、私は、お父さんのジャケットを持って、ハンカチでお父さんの額の汗を拭いていた。坂道とはいえ、途中途中が階段状になっている急な登り坂なのだ。

「うん 普段 歩いているんだけど これは、きついな」

「お父さん あそこ」

「そうか 着いたか」

 私は、お花を添えて、ペットボトルのお水でお墓をきれいにした。お父さんは、お線香をあげながら、長いこと、お参りしていた。そして、私も・・涙が滲み出ていたのかも知れない。お父さんが、優しく、私の肩をポンポンと・・

「香波 海が見渡せて、きれいな所なんだな ワシは誓ったんだ お父さんとお母さん、おばぁさんにな 何があっても 香波を幸せにするから、任せてくれって」

「お父さん ありがとうございます 私も 報告しました 今 とっても 幸せです だから、安心してって」

「そうか 幸せか 良かった」

「お父さん 私 行きたいとこ あるんだけど 良い?」

「おお 良いぞー 気になるとこあるんか?」

 そして、港の反対側 砂浜の広がるところに出て行った。そうしたら「ワァォーン  ワン ワァン」という・・「バク だ」

 私は、荷物も捨てて走り出した。バクは繋がれたままだったんだけど、飛び跳ねて・・わかってくれたんだ。私の姿を見る前から・・忘れていなかったんだ。私だってこと。

 私は、バクを抱きしめて、顔中をべろべろされていた。その時

「香波ちゃんけー んまぁー でーれー べっぴんに・・そんで、さっきから、バクが騒いでおったんか」巌さんだ

「あっ お久しぶりです お墓参りに」

「そうなんか バクもな 香波ちゃんがおらんようになってから、毎日、あそこの岩場とか浜に行って海辺ばっかり、暗くなるまで見ちょったな 元気なかったんじや こんなに うれしそうにしてるのは、久し振りじゃけー」

「ごめんね バク 私 黙っていってしまって」て、泣き出していたんだけど、バクは、私を慰めるように、擦り寄ってきてくれていた。 

「巌さん 私 バクと砂浜で遊んできて良い?」と、バクと砂浜でじゃれあっていた。私、水着でくれば良かった。バクは波打ち際に誘ってくるから・・。だから、ズボン
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