第八十一部第一章 全戦線でその二十八
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「間違いなくだ」
「出ますね」
「それも最悪の時にな」
「軍事のミスは普段は起きない」
「起きても目立たない、しかし」
それでもというのだ。
「ここぞという時にも出てな」
「惨事につながりますね」
「それを引き起こす」
まさにというのだ。
「そうなる」
「マウリアで何かあった時に」
「ヒトラーは一つ才能に欠ける分野があった」
モンサルヴァートは再びこの独裁者の名前を出した。
「それは何かというとな」
「軍事でしたね」
「彼は破綻していたドイツを瞬く間に立て直した」
多くの批判をこの時代でも受けていることは事実だ、特に連合において。
「そして軍隊もだったが」
「その戦争指揮たるや」
「見ての通りだ」
第二次世界大戦、この戦争をというのだ。
「あの通りだ」
「無闇に現場に介入し」
「そしてだ」
「自国の軍隊に多くの犠牲を出させましたね」
「スターリンもそうだったがな」
この独裁者もというのだ。
「ヒトラーのそれはな」
「そしてジャバル副主席も」
「若しだ」
こう前置きしてだ、ギルフォードは話した。
「マウリアが戦争を行うとだ」
「その時ジャバル副主席が国家主席なら」
「その時はだ」
まさにというのだ。
「かなり酷い戦争指揮を行う」
「現場にも人事にもですね」
「どちらにも非常に介入してな」
「戦争を混乱させますね」
「そうする、それではな」
「マウリアは敗れますね」
「そもそもジャバル副主席は文民だ」
軍事的才能がない以前にというのだ。
「軍規軍律は守らせてだ」
「そしてですね」
「戦略にも従わせるが」
「人事は決めても」
「そこへの恣意的な介入はよくない」
「特に戦術には」
「ジャバル副主席はそれを行う」
間違いなくというのだ。
「そしてだ」
「マウリアは敗れますか」
「そうなる、彼の愛読書についても聞いているが」
「相当な読書家だとか」
モンサルヴァートもこのことは知っている。
「何でも」
「その様だがな」
「それでもですね」
「軍事関係の書はなかった」
言われている彼の愛読書の中にはというのだ。
「一冊もな」
「政治や経済、哲学、文学と多岐に渡り」
「彼の知性や教養が窺える」
そうだというのだ。
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