暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
ソ連の長い手
ミンスクハイヴ攻略 その3
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(みな)迄言うな……」
そう言うと、口つきタバコを深く吸い込む
ゆっくりと息を吐き出すと、漆黒の海にタバコを放り投げた
「この作戦が終わった暁には、皆で30年物のティーリング(TEELING) でも飲もうではないか」
そう言うと、隊員たちを一瞥する
 無事帰った際は、30年物の アイリッシュ・ウイスキーの封を開けることを約束した
闇夜に男達の哄笑が響いた

 バルト海上に展開されたタンカーの構造物が吹き飛ぶ
爆風が消え去った後、タンカーの甲板があった場所には箱のようなものが現れる
そこには、戦術機が縦に2列で6機づつ並んでいる
「出撃準備」
KGB工作員の一団は、大佐の掛け声と同時に戦術機に乗り込んだ
「ベルリンのみならず、ボンのファシスト共を調教してやろうではないか」

 複数の母船より、次々に戦術機が跳躍ユニットを全開にして、前方に向かい飛び上がる
自然落下で、海面擦れ擦れに降下し、高所より飛び込むように跳躍する
 噴射跳躍(ブーストジャンプ)と称される戦術機の立体軌道の一つだ
噴射跳躍をしたかと思うと、跳躍ユニットを全開にして水平に飛ぶ
横一列に隊列を組んで、深夜のバルト海を低空飛行した
 水面との距離を取らないのは、レーダー対策
地上のレーダー基地では、航空機の超低空飛行には対応出来ない
戦闘機パイロット出身者にとっては常識であった
 
「同志大佐、匍匐飛行では燃料は……」
「30分あれば十分足りる。
ファシスト達の首を抱えて帰ってきても、間に合おう」 
 戦術機の最大の弱点の一つ……
それは従前からある兵器とは違い、航続距離の短さ
燃料タンクの大きさにより戦闘行動半径は150キロメートル、巡航は600キロメートル
戦前に設計され、第二次大戦と朝鮮戦争を戦ったF4U コルセアの4分の一以下の航続距離
米ソ両国に在って、未だ通常兵器への信奉があるのは、此の為であった

 通信用アンテナの付いた戦術機よりKGB大佐の訓示がなされる
「同志諸君、東ドイツの連中はかなりの手練れ……。
だが対人戦にはめっぽう弱いと聞く。歓迎してやろうではないか」



 謎のタンカーの接近は、時間を置かずして、ドイツ人民海軍に察知された
バルト海上の、東ドイツ領・リューゲン島にある人民海軍基地から即座にベルリンに(もたら)された
同島は戦前にはリゾート地の一つであったが、東西分割後は軍事拠点として整備される
東独唯一の特殊部隊・第40降下猟兵大隊も、同島に配備されていた

 ベルリンの第一戦車軍団基地
戦闘指揮所に、男の声が響き渡る
「同志ベルンハルト中尉、君は精鋭10名を連れてソ連機の対応に当たれ」
深緑色の野戦服を着たハンニバル大尉は、真向かいに立つユルゲンを指差すと
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