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竜のもうひとつの瞳
第十話
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良い」

 ……おいおい、雪解けで季節は春になろうってのに、まだ寒いのかい。
毛皮なんか被らなくても十分なくらいに温かいでしょうが。
もしかして、次の冬に使おうとでもしてるわけ?

 「Ah……OK、持って行きな。また風邪なんか引かれちゃ困るしな」

 とても嬉しそうな小十郎を見ながら、私はどてらでも買ってやるかと割と本気で考えていた。
まさかとは思うけど、毛皮のコートなんか作っちゃうつもりじゃないでしょうね。
そんなの着込んで戦場に向かうとかないわよねぇ? ……この子なら有り得る。
時折予想の斜め上を行く変なことやらかすし。天然ボケと言ってしまえば可愛いけれど、ねぇ……。

 「兄ちゃん、もう悲しんでねぇだか?」

 いつきちゃんのこんな気遣う言葉に、小十郎は苦笑していつきちゃんの頭を撫でている。
そりゃ、十二の子供の前であんだけしっかり泣いて見せたんだもん、心配されても仕方が無いわ。

 「大丈夫だ。ここは俺をしっかりと受け入れてくれる人がいる。だから、悲しむことはねぇさ。
……お前は大丈夫か? 村の連中に」

 「大丈夫だ! 皆優しいからな! 村のみんなはおらを受け入れてくれるだから……おらは悲しんだりしてねぇ」

 「そうか」

 小十郎が見せる穏やかな笑みに、いつきちゃんも笑っている。
こんな小十郎の様子を私と政宗様は顔を見合わせて笑って、たまたま見ていた兵達も鬼が笑ってるよ、なんてことは言わなかった。



 これから天下獲りが始まる。
奥州平定は政宗様が家督を継いでからあっという間に済んじゃったような気がしたけど、今度は長い戦いになるだろう。
きっと、いずれ織田ともぶつかることになるかもしれない。まぁ、羽州とぶつかる方が早いような気がするけどもさ。

 ずっと伊達家に留まって、政宗様の天下獲りを手伝うものだと思っていたけれど、
人生ってのは何があるか分からないもので伊達家を離れることになった。
本当、政宗様にあんなことされるとはね。ちょっとは常識があると思ってたってのに。
でもまぁ……それはまた別の話。私の気が向いて機会があったら語ってあげようかな?
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