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冥王来訪
第二部 1978年
ソ連の長い手
牙城 その4
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首を掴むと、背中に向けて拳銃ごと右手を捻った
苦悶の表情を浮かべ、思わず悲鳴を上げる
「流石の物だ……、木原マサキ君。
冥府の王を自称するだけの自信は、ある様だね」
彼の右手より、自動拳銃を取り上げると引き金を引く
反動で遊底が作動するも、ばねの音のみ、虚しく響く
「驚いたものだね。空の拳銃を使って私を脅していたとは……」

「もし、お前が俺のピストルを奪ったら……どうする。
間違いなく狙うであろう」
男は不敵の笑みを浮かべる
「いやはや、君を甘く見ていた様だ……」
その時、ドアが静かに開く
自動小銃を構えた美久と拳銃を手にした綾峰たち
鋭い表情で此方を見る
「貴様には、色々と聞くことがある」
筒の様な物を取り出し、周囲に見せつける
「私もやらねばならぬ事があるので……。
ここは、痛み分けと言う事で、どうかね」
男の持っている物は発煙筒で、栓を抜き放り投げる
綾峰たちは、咄嗟に避け、地面に伏せた
小さい爆音とともに緑色の煙が広がる
充満した煙を防ぐため、咄嗟に次元連結システムを作動させる
気が付くと、男の姿はどこにも見当たらなかった
後ろを振り返ると、窓が開いているのに気が付く
3階の窓から逃げたのであろうか……
彼は、床に膝を付けながら肩で呼吸をした
「俺も、甘く見られたものだ……」
煙幕により火災報知器が作動したようだ……
鳴り響く警報音を聞きながら、彼は床に倒れ込んだ


5月1日 ハバロフスク 12時

「な、何て恐ろしい事をしてくれたのだ。気でも違ったのかね」
目の前に立つKGB長官に向かって、男は吐き捨てた
「今、木原の立場はソビエトが招いた賓客(ひんかく)なのだよ」
肩を震わせながら、拳を握りしめる
「その彼を襲うとは……」
怫然とする首相を横目に、KGB長官は感心したかのようにマサキを誉める
「抜け目のない男よ。短機関銃(サブマシンガン)まで用意していたとは」
顎に当てていた手を、机に伸ばす
「ロケット弾を撃ち込めば良かったかもしれぬな。同志大佐」
机の上に置いてあるシャシュカと呼ばれる、カフカス地方由来の刀剣を手に取る
鍔のない独特の形で、まるで合口(あいくち)を思い起こさせる拵え
鯉口を切り、滑らかに刀身を抜き出す

「木原を招くことは政治局会議の既定路線……。
この采配を反故にすることは、議長の信用に関わる。どうする心算(つもり)なのだ」
男は、言葉を言い終えるのを待っていたかのように持っていた刀を振りかぶる
そして、机の端を切り落とした
首相は、その様を見て思わず絶叫する
「戦うまでだ」
そう言って、切っ先を椅子に腰かける老人に向ける
「議長、貴方はソビエト連邦共和国の最高指導者。小童(こわっぱ)共に軽んじられて、どうなさる心算
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