暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
ソ連の長い手
欺瞞 その4
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んたの最期を見届けてやるんだよ」
拳銃の銃把を握りしめる
「消えてくれるか」
不敵の笑みを浮かべ、引き金を引く
「待ってくれ、俺はソ連外交の要の……」
自動釘打ち機の様な音が響き、男は倒れ込む
来ていた背広より、血が滲む
「任務に失敗した……、党とのしての示しを付けるために死んでくれ」
脳天に向け、二発の銃弾を撃ち込む
男は言い返す間もなく、こと切れた

 木原マサキ襲撃事件失敗への対応は、政治局会議で事前に決定していた
KGBは、東独大使館関係者250人を既に拘束
主だった官僚と高級将校は、粛清、下士官兵は、最前線送り
大使は、尋問中に《自殺》、同地のKGB幹部も死亡した状態で《発見》
その様な筋書きで、事態は動いていたのだ

「引退すると言えば、楽に殺した物を……」
消音装置を分解し、銃を背広の腰ポケットに仕舞う
「木原が何が目的か分かりませんが……、最もどうでも良い話です」
長官の左脇に移動した
「我等、共産党(ボリシェビキ)に勝負を挑んでくる。
だから、仕掛け爆弾で消し飛ばしましょう」
長官は、その発言に耳を疑った
「奴等の乗った汽車や船ごと、爆弾で吹き飛ばす。
実に簡単でしょう」
長官は左脇に居る第一総局長の顔を覘く
「本気かね」
男は、驚きの表情を浮かべる長官には目を呉れず続ける
「実に簡単な仕事です」
長官は、室内電話を取ると3桁の数字を押した
「第7局破壊工作対策課に繋げ」
そう告げると、受話器を勢い良く置いた


 カーキ色の開襟野戦服に身を包んだ男が敬礼をする
「お呼びでしょうか、同志長官」
大佐の階級章を付け、ソ連軍では珍しいつば付きの野戦帽を被り、紐靴を履く
男は第7局破壊工作対策課長で、KGB特殊部隊『アルファ』の司令官であった
 長官に代わり、第一総局長が伝える
「消してほしい人物がいる」
「誰を」
大佐の方を振り向く
「木原マサキと氷室美久の二名だ……」
長官が、ふと漏らす
「同志大佐、木原は手強い。気を付けて任務にあたり給え」
不敵の笑みを浮かべる
「すでに東ドイツの組織は壊滅した……。
君達がしくじれば、奴を汽車ごと爆弾で消そうと思っている」
真剣な面持ちで、大佐は答えた
「では私の行動は、西のプロレタリア人民と社会主義諸国の同胞の命を救うと……」
眼光鋭く、彼を見つめる
「その通りだ」
そう言い放つと、男達は哄笑した
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