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冥王来訪
第二部 1978年
ソ連の長い手
首府ハバロフスク その3
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みろ……」
青筋の滲みあがってきた顔で、語り続ける
「奴と接触した中共や東ドイツの首脳部がどうなったか忘れたか。
社会主義を捨て、修正主義に走り、ブルジョア経済に簡単に翻意したではないか」
彼は、ソ連経済圏からの東欧諸国の離脱を恐れた
社会主義経済の誤謬という事実を、認めたくはなかった……
「それ程の男なのだよ……」
その逃げ口として、木原マサキの言動を原因とする発言を行う
しかし、それはまたマサキという男を過剰に畏れたという事実の裏返しでもあった 
 周囲の人間がたじろぐ中、こう言い放つ
「奴の行動を思い起こしてみよ……、全てを破壊する為に生まれて来た様な男……」
立ち上がると、右の食指で壁を指差す
「世界に比肩(ひけん)する者のない超大型戦術機、ゼオライマー。
それを自在に扱う木原マサキ……」
振り返ると、周囲の混乱を余所に窓外の景色を眺める
二階より市街を俯瞰(ふかん)しながら、男は深く悩んだ

 夕刻、レーニン広場に面したハバロフスクの臨時庁舎
ソ連政権では、嘗ての地方政府庁舎を改装して、クレムリン宮殿の代わりに使用
そこでは、ソ連首脳の秘密会合が始まっていた
議題は「ゼオライマーの対応」で、喧々諤々の議論がなされる

「お言葉を返すようですが、議長。
どうして木原マサキ抹殺をそんなに急ぐのですか」
赤軍参謀総長が、上座の議長に問いかける
「ミンスクハイヴの攻略を完了させて、十分な褒賞を与える。
それから工作員を用いて殺せばよいではないでしょうか……」
 議長と呼ばれた老人は、目の前の軍人にこう返す
「それが非道だと言っているのだ。参謀総長、良く聞いてくれ」
諭すように答える
「木原にそれだけの仕事を任せれば、我々が利益を受ける。
彼は我が党の為に、貢献したわけだ……。
その彼を今度は殺すとなると、それ相応の理由が必要であろう」
両手を掌を上にして広げる
「私の信任厚いKGB長官の名誉のために殺すとなると聞こえが悪い。
ソ連共産党は、KGBに(そそのか)されると党組織に貢献した者まで殺すのかと……」
太いへの字型の眉を動かし、黒色の瞳で参謀総長を睨む
「党員達に(きし)みを与えかねん」
左側の外相の方を振り向く
「なあ、そうは思わんかね」
言葉を振られた外相は、正面を向いて話し始める
スターリン時代の粛清を生き延びた数少ない人物として、党内での地位も高い男
長らく外相の地位にあり、若かりし頃は駐米大使を務めあげた
「議長、貴方はチェコスロバキアの首相を『修正主義者』として非難して、拘束してるじゃろう」
彼は、困惑する老人の顔を覘く
「そんな貴方がいまさら何を惜しむのかね」
「し、しかし……」
すっと、国家計画委員会(ゴスプラン)委員長が立ち上がる
国家
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