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ドリトル先生とめでたい幽霊
第十二幕その四

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「実際に」
「そうですね」
「そうした奴はもう落ち着くこともないわ」
「落ち着くより前にですね」
「そこにおられん様になる、どうせ能無しやのに文句だけいっちょまえやな」
「そうですね」
「人間文句ばかりで何もせんと誰からも見放されるわ」
 そうなるというのです。
「どうせ上にドが付くケチでしかも恩知らずやろ」
「そうです」
「何しても後ろめたいことは感じん」
「自分だけなので」
「私の作品は最後落ち着くけどな」
「落ち着くことも出来ないですね」
「仮寝の宿でもな」 
 そうした落ち着く先でもというのです。
「何処もおられん様になって」
「終わりですね」
「やっぱりな、人間落ち着く先に辿り着けることも」
 このこともというのです。
「それなりのもんが必要やねんな」
「その通りですね」
「先生と話して実感したわ、どうしようもない奴はな」
「救われないですね」
「ほんま仮寝の宿もないわ」
 そうした場所に辿り着けないというのです。
「愛嬌も何もなくて天狗やと」
「言ってもですね」
「聞かんしな」
 人の忠告をというのです。
「そやからな」
「それで、ですね」
「それでな」
「落ちるだけですね」
「それだけや、ほんまどうにもならん奴は」
 先生にまた言うのでした。
「つける薬ないわ」
「落ちるだけですね」
「というか私の作品の人間も大概やが」
 織田作さんは自分もと思いつつ言いました、そして着流しの袖の中で腕を組んでそうして言うのでした。
「そこまで酷いのもおるからな」
「世の中には」
「そうなったらあかん、かみさんも大事にせんやろ」
「奥さんが家を出た時に爪切りまで持って行ったと」
「爪切りなんかどうでもええやろ」
「そうですがね」
「というか爪切りまで世話になってて感謝せんか」
 織田作さんもこのことを言いました。
「それで恩も感じんで自分の甲斐性なしも思い至らんで」
「甲斐性ですね」
「それもないししかもな」
「それを他の人に言いました」
「あかんわ、そこまでいったら」
 織田作さんは腕を組んだまま言いました。
「もうどうにもならん」
「そうですか」
「ほんまにな、私もそうしたモンは見て来ても」
「作品にはですね」
「軸には置かん、どうにもならんからな」
「落ちるだけで」
「せめてかみさんに感謝せんとな」
 ここでもご自身のことを思うのでした。
「それ位はないと」
「料理を作ってもらっても甘い辛いと」
「文句だけか」
「そうだったとか、お仕事から帰ったおくさんが」
「自分は働いてへんでか」
「そうでした」
「それどうにもならん、昔の今宮で乞食も出来ん」
 織田作さんの言葉は完全に見放したものでした。
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