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犬の気持ちを知れ
第一章
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                犬の気持ちを知れ
 育児放棄の件で逮捕され前科までついた百田家の夫婦は禁治産者に認定された、夫はそれでも会社に行ったその日にだった。
 妻は近所の人達に声をかけられてある場所に車で連れて行ってもらった、だがその前にファミレスにも連れて行ってもらって。
 昼だがワインをご馳走になった、最初は断っていたが育児放棄で捕まり警察に散々言われ禁治産者にも認定されてだった。
 非常に不機嫌だったので憂さ晴らしに飲んだ、精神的にストレスが溜まっていたのでガブ飲みした。それでだ。
 かなり酔ってファミレスを出たところでまた車に乗ると寝てしまった、だが起こされるとその場所は。
 彼女が知らない場所だった、多くの犬や猫が収容されていて薄暗く寒い場所だった。彼女はその中を酔った顔で見回して連れて来た近所の人達に尋ねた。
「ここ何処ですか?」
「何処って保健所よ」
「見てわからないの?」
「あんたが旦那さんに行ってふわりちゃんを捨てた場所よ」
「その保健所よ」
 近所の人達は冷たい声で答えた。
「覚えてないの?」
「あれだけ可愛がっていた娘を捨てた場所だったのに」
「もう殺処分されろって感じでね」
「鳴き声が五月蠅いって言って捨てた場所よ」
「その場所も覚えてないのね」 
 彼女に冷たい声のまま言うのだった。
「あんたのふわりちゃんへの気持ちってそんなものだったのね」
「可愛がっていたけれど」
「自分の娘さんや家族として可愛がってなかったのね」
「おもちゃでしかなかったのね」
「だからあっさり捨ててなのね」
「何とも思わなかったのね」
 彼女のその過去を彼女自身に突き付けて話した。
「命を何と思ってるのかしらね」
「ワンちゃんも生きてるのに」
「それで心もあるのに」
「ふわりちゃんずっとあんたと旦那さんを慕っていたのに」
「そんな娘を殺されろであっさり捨てて」
「いらなくなったおもちゃとして」
「だから赤ちゃんもほったらかしだったのね」
 育児放棄の件も言うのだった。
「可愛がっていても次の娘が産まれたら」
「もうほったらかしで」
「無視してたのね」
「ふわりちゃんを捨てた様な人達だから」
「そうしたのね」
「命も心も何も思ってないから」
 だからだというのだ。
「そうしたのね」
「ふわりちゃん捨てて赤ちゃんもほったらかしにして」
「それで何とも思わないのね」
「本当に最低な人達ね」
「ここでちょっとはあんた達に捨てられたふわりちゃんの気持ち知りなさい」
 冷酷な宣告の様に告げた。
「どれだけ寒くて寂しくて悲しかったか」
「もういらないって言われて捨てられた子の気持ちをね」
「まああんた達みたいな人達にはわからないけれどね」
「ここで味わいなさい」

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