第二章
[8]前話
「香水変えたのね」
「林檎の香りのものにしたのね」
「そうなのね」
「そう、それで今度こそね」
リンは同期達に強い声で答えた。
「ゲットするわ、何かね」
「何か?」
「何かっていうと」
「いや、彼をずっと見ていたら」
それならとだ、リンは同期達に語った。今は昼食の場で会社の中で自分が作った弁当をたべている。
「どんどんね」
「好きになったの」
「そうなったの」
「ええ、何かいつも意識しているから」
だからだというのだ。
「そうなったわ、だからね」
「そうなのね」
「それじゃあなのね」
「もう絶対になのね」
「彼ゲットしたくなったのね」
「そうなったからね」
それでと言ってだった。
リンはさらに彼を意識して変えていった、そうして三度目の告白をすると。
織部もだ、こう答えた。
「ずっと僕を見てくれて僕のことを知ってくれてですね」
「ええ、貴方の好みに合わせてね」
自分自身をとだ、リンは答えた。
「それでなの」
「そうですね、だったら」
「まさか」
「はい、そこまで想ってくれる人を嫌いになる筈がないですし」
織部は真摯な声で答えた。
「僕も僕を見てくれて僕の為にそこまでしてくれる先輩が好きになりました」
「それじゃあ」
「これからお願いします」
織部から頭を下げた、すると。
リンは自分の口を両手で塞いでだった。
熱い涙を流した、そうしてだった。
彼との交際をはじめやがて結婚したが。
それから二十年経ってもだ、今も付き合いのある同期の面々と集まった時に彼のことを話すのだった。
「もうそれでね」
「やれやれ、今ものろけっぱなしね」
「旦那さん好き過ぎるでしょ」
「二十年ずっとそうじゃない」
「結婚してからも」
「だって本当に愛してるから。あの時苦労してね」
そうしてというのだ。
「あの人ゲットしてよかったわ」
「何度振られても向かって」
「彼の好みを知って合わせて」
「そうしてなのね」
「ええ、だからもう二度と離れないわ」
こう言ってのろけ続けるのだった、振られたことは決して無駄ではなかった。そう思いつつ今ものろけるのだった。
言わせてみせる美女 完
2022・2・22
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