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茶器茶器娘
第三章

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「これは」
「百万円って」
 彗士は鑑定士の言葉に思わず声をあげた。
「ちょっとそれは」
「ないですね」
「千円が百万円って」
「千倍ですから」
「それはかなり」
「これはビクトリア女王の頃のイギリスのものです」 
 鑑定士はそのセットのことを話した。
「それも王室の中でもかなり上位の方が特別に造らせた」
「といいますと」
「はい、ビクトリア女王の使っていたものです」
 他ならぬ彼女のというのだ。
「まさに」
「そやからですか」
「当時の相当な腕の職人さんに特別に造らせて」
 そうしてというのだ。
「丁寧に使われていて保存されていて」
「かなりの価値がありますか」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「百万はです」
「しますか」
「よくこんなものがありましたね」
 鑑定士は彗士にこうも言った。
「京都に」
「本来ならイギリスにあるものですね」
「それも王室に」
「ですがどういう訳か」
「日本に流れ着いたんですね」
「そうですね」
 実際にというのだ。
「ほんまに」
「これはこれだけで財産になります」
 鑑定士はティーカップのセットについてこうも言った。
「凄いものです」
「では家でどうするか話します」
「そうされますか」
「はい」 
 こう鑑定士に答えてだった。
 彗士は亜久里と共に家にカップのセットを持って帰って家族でどうするか話した、茶道の茶器は家の仕事道具なので使えたが。
 この家では紅茶を飲むのは趣味だ、それでだ。
 流石にそこまで高価なものは使えない、それで祖父はこう言った。
「元々あちらのものや」
「イギリスのですか」
「あちらさんの王室のもんやさかい」
 それでとだ、祖父は買って来た亜久里に話した。場には彗士も二人の両親もいる。皆着物姿である。
「そうやさかいな」
「お返ししますか」
「領事館から話してや」
 イギリスのそこにというのだ。
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