暁 〜小説投稿サイト〜
レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission4 ダフネ
(4) ヘリオボーグ研究所総合開発棟14F屋上~第一区画正門
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 ユティの前には、柵越しにヘリオボーグ研究所の棟とトルバラン街道が広がっている。
 無機と有機のちぐはぐな景色が地平線まで広がり、夕陽がそれらに等しく降り注いでオレンジに染め上げる。

 ユティはカメラを遠景に設定してシャッターを切った。
 次いでカメラを操作し、ファインダーに今までのフォトデータを参照する。

(そろそろ現像に出さなくちゃ。ユリウスにも写真付きで報告するって約束したし)

 突入前のアルヴィンの困った顔。
 ヘリオボーグ研究所でのテロ被害。ユティが知る技術に比べれば格段に劣る黒匣(ジン)製兵器。
 銃を届けに来たはいいが扱いにビビるイバル。
 ティポに文句をつけるエルと反論するエリーゼ。
 雷パニックのあとでコケたエルと、助け起こすルドガー。
 褒め言葉を間違えてティポに頭からかじられるルドガーと苦笑いのジュード。
 源霊匣(オリジン)ヴォルトとの戦い――

「泣いたカラスがもう笑ってやんの」

 上からアルヴィンがユティの手元を覗き込んでいた。後ろに立たれるまで気配に気づけなかった。

「落ち込んでんのかと思って慰めに来てやったのに」
「元気になれた。これ、元気の素」
「どれどれ……わ、何だこりゃ。おたくら、ここに来るまでによく死ななかったな」
「ここ何日かで、今日までの人生の素振り、本振り回数を超えた自信がある」

 列車での移動はともかく、街道を行く時は特に気を配った。素質はピカイチだが経験不足のルドガーを補うべく、スピアで刺し貫いた魔物は数知れない。
 今日もルドガーのフォローのために何人のアルクノア兵を殺したやら。

「槍、ガキの頃からやってんのか」
「5歳からやってる。とーさまに教えられた」
「5歳!? おたく見たとこ17,8歳だろ。えらく長いことやってんだな。傭兵志望か?」
「16歳だよ。なれるならカメラマンになりたかった。あと、アナタに比べたら短い気がする」

 ユティの知るアルヴィンとは親子ほどの歳の隔たりがあり、アルヴィンが銃と剣を握っていた年数もそれに比例する。
 しかし、馬鹿正直にそれらを、面食らうアルヴィンに話すわけにはいかないので。

「おじさんのアナタとユティじゃ生きてる年数からしてちがうし」

 ビシ! 本日二度目のデコピン。今度は笑えなかった。痛い。じわじわ来る。

「さっきも言ったが、誰がおじさんだって? 俺はまだ27だ」
「……アラサーはおじさん圏内では」
「もっぺん食らうか?」
「ゴメンナサイ」
『あー、アルヴィンがユティに大人げないことしてるー』

 ティポがふよふよと漂ってきた。ティポを追ってエリーゼも来た。

「女の子を叩くなんて最低ですよ、アルヴィンっ」『励ましに行くって言ったくせに何やってんだ
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