暁 〜小説投稿サイト〜
冥王来訪
第二部 1978年
ミンスクへ
我が妹よ その4
[1/3]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 翌朝、ドイツ首脳部はソ連への連絡を入れる
議長辞任と内閣総辞職を伝えたが、ソ連政府の反応は冷淡で、むしろ彼等自身が驚いたほどであった
其の事は彼等にある事を確信させた
「ソ連は東欧情勢に構う余裕すらない」
今の国力を半減させた状態では、東欧の社会主義圏の維持など重荷でしかない
だが、首脳部とKGBの考えは違うようだ
KGBは自らの障壁として、東欧諸国を考えて居り、如何に活用するか、を重視しているように見える

 アスクマン少佐は、宮殿に呼び出された
早朝の蕭然(しょうぜん)たる殿中を歩く
誠意を示すために、(あえ)て拳銃を帯びずに来た
ある部屋の前まで来ると、室外からノックをして入る
室内には平服の男達が数人座っていた
見慣れぬ人物もいるが、今回の新閣僚達であろう
「お呼びに預かり、参りました」
静かに敬礼すると、直立の姿勢を取る
書類挟みを持った男が、声を掛ける
「一つ尋ねる。
シュミットの事をどう思うかね……」
彼は不敵な笑みを浮かべる
「それなりに優秀な上司だと、個人的には考えて居ります」
男達は頷く
「まあ、良い。
君には一つ頼み事がある。
例の個人票を3つほど複製して、各所に隠匿(いんとく)してほしい。
まだ利用価値の十分にあるものだ。
若しもの時、外に持ち出されたりすれば、事は重大だ」
笑みを浮かべた侭、答える
「外と申されても、それは場所によります。
国外であるか、国内か。
対応が全く違ってきます故……」
「まあ、マイクロフィルムか、磁気テープに複写して持ち運び出来る様にするのも方策かもしれぬな。
KGBの分だけでも先に、仕上げ給え」


「BND(連邦情報局/西ドイツの防諜機関)の動きはどうかね。
対外諜報の専門家の率直な意見を聞きたい」
彼は直立したまま、答える
「彼等は、この混乱に乗じて浸透工作を行っているの事実です。
ですが、それ以上にCIAやMI6(英国情報部)等が、多額の秘密資金を国内に持ち込んだとの未確認情報が持ち上がっております。
想定される事態ですが、《パレオロゴス作戦》を通じて我が国に進駐する準備なども成されるかもしれません」
左端の男が、眼鏡を右手で上げる
「ほう、君の言い分だと西側の軍隊がハンガリーやチェコに進駐する可能性があると……」
「否定出来ません」
「その件は、後日決めさせてもらうとする。
所で、衛兵連隊強化の話ではあるが、却下とする。
あんな戦術機(ドンガラ)を増やした所で、意味があるとは思えん」
彼は焦った
「何故ですか。
これ以上亡命者を増やすおつもりですか」
書類挟みを持った男が薄ら笑いを浮かべる
「違うな。
戦力の分散を避けるためだよ。
二重の指揮系統は、前衛党には不要であろう……」
書類挟み
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ