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着飾る理由
第三章

[8]前話
 由美は最も声をかけられた、そして友人達と共に彼等との時間も楽しんだ。
 そうして合コンや海で独身男性達と着飾って会っているうちにだった。
 由美はとあるサラリーマンの優しい男性と知り合い彼と結婚することになった、校長は由美自身からその話を聞いて仰天した。
「先生結婚されるのですか」
「はい」
 由美はいつものジャージとノーメイクの姿で答えた。
「婚約しましたのでご報告に」
「そうですか、先生がですか」
「そうです、お仕事は続けますので」
「ではこれからも」
「名字は変わりますがお願いします」 
 こう言うのだった、だが。
 校長は由美から聞いた後で教頭の仮屋夏男、初老の太った大男の彼を居酒屋に連れて行ってそのうえで話した。
「まさか渡辺先生が結婚するとは」
「それですね」
 教頭もその話に応えた。
「思いませんでしたね」
「夢にも」
「私もですよ」
 教頭はビールを飲みながら応えた。
「あれだけ地味で」
「あの外見ですから」
「相手の人は余程渡辺先生のお人柄を好きになったのですね」
「真面目で公平な人ですからね」
「そうですね、さもないと」
「あの外見では」 
 彼等の知る由美のそれから話した。
「お世辞にもです」
「あまりにも色気がなくて」
「それではですね」
「声をかけないですね」
「気にしないです、そう考えますと」
「やはり性格ですね」
「それを気に入ったのでしょう」
 相手の男はというのだ。
「そう思うと納得出来ますね」
「そうですね、渡辺先生はいい人と巡り会えましたね」
 彼等が知る由美から述べた、だが。
 彼等は知らなかった、確かに相手の男性は由美の性格から結婚を決めた。しかしそのはじまりは合コンの時の艶やかな由美を見て思わず声をかけてからだということを。そして。
 彼は家ではいつもジャージを脱いで艶やかな由美に魅了された、そこにいる由美は学校の由美ではなかった。極めて刺激的な彼女がそこにいた。


着飾る理由   完


                  2022・1・19
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