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冥王来訪
第一部 1977年
策謀
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一人の男が保安省の一室に呼ばれた
少佐の階級章を付け、《俳優のような顔》と、そやされるほどの眉目秀麗
通り名を《褐色の野獣》と呼ばれる、中央偵察管理局の《精鋭》工作員、アスクマン
彼は、直属上司の下に来ていたが、その際、衝撃的な出来事に遭遇していた
色眼鏡を掛けた禿髪の上司の下に、男が居た
男は、非武装で、白い襟布が縫い付けられたソ連軍服を着ており、勲章もつけていなければ、階級章や識別章もなかった
国家章のついた草臥れた軍帽を弄んで、上司と話している
ただ、その態度からただならぬ人物である事が判った
彼等の話し言葉からすると、ドイツ語ではなく、ロシア語であったことがおおよそ分かった
男は、アスクマンがいるのに気が付かぬほど興奮しており、激しい口調で罵っていたのだ
「あの冷酷そうな男が怯えるほどの人物とはどれ程の者なのか」
好奇心が湧いては来たが、その様な間違いをするほど、《青く》ない。
静かにドアの方に戻ると、静かになるまで待った

「入れ、若造」
件の男が、流暢なドイツ語で話しかけてきた
「失礼致します」
敬礼をすると、軍帽を脱ぎ、彼はその人物に、改めて挨拶した
「私は、中央偵察管理局の……」
その男は、顔を引きつらせながら答えた
「君が《男狩り》をやっている、《褐色の野獣》かね。
兼ねがね話は聞いている。
NVA(国家人民軍)への工作を任されているそうだが……」
彼は驚いた
目の前のソ連人は、唯の軍人ではないのは分かっていたが、同業者であったことに……
「しかし、情けないとは思わんのかね。
対抗手段を作ると息巻いたものの、あれから2か月近く経つのに何も青写真一つ描けていないとは。
大方、色事にでも、現を抜かしていたのかね。
聞くところによると、詰まらぬ《覗き見》や、美男美女を選んで《御飯事》の真似事をして居るそうではないか。
その様な《児戯》で、少佐の地位を得られるとは……」
彼は、男に尋ねた
「貴様、何がしたいんだ」
男はにやけながら室内を歩いて、こう続けた
「さあ、何がしたいと思う」
彼は上着の内側から小型拳銃を取り出す
素早い動きで、男の胸元へ向ける
「ピストルなんか出して、何のつもりだ」
身動ぎ一つせず、男は彼に語り続けた
「俺を恐喝しにでも来たか。小僧」
拳銃を突き付けられながらも、焦る様子はない
彼は不安に駆られた
挑発するように、詰め寄って来た
「貴様のような、《部外者》が何を騒ごうが構わないが、ここをどこだと思っているんだ」
引き金に指を掛けようとした瞬間、彼は気が付いた
自分が、複数に囲まれていることを……
ヘルメットを被り、野戦服を着た完全武装の兵士が、銃を向ける
「お前たち、何のつもりだ」
両目で、自動小銃を構える同僚たちの顔色を窺う

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