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冥王来訪
第一部 1977年
慕情
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1977年9月11日
アルバニアに突如、米海軍の空母機動部隊が進行した
四隻のエセックス級空母を主力とする機動部隊と地上から隣国ギリシャの支援による大攻勢を実施
F4Uコルセア、F8Uクルセイダーの航空機のほかに、大々的に戦術機の海軍航空隊運用による初の対人実戦が行われた

先頃、ロンドンで、国連及び英政府仲介の米ソ交渉が行われた後の事件に、世界中が驚愕した
中共と唯一の友好国であり、鎖国中のアルバニアへの攻撃には、様々な報道が飛び交った
『米国による代理《懲罰戦争》』
『《戦術機》の実証実験』
『ミンスクハイヴ攻略作戦の退路確保の為の《掃除》』

戦闘は2週間続き、社会主義政権は機能を喪失
その国の首領は、ルーマニアへの脱出途中で《捕縛》され、ソ連へ引き渡された
その後、『アルバニア人民への反逆』『スターリン主義の走狗』『BETA侵攻を理由とした世界人民への背信行為』の罪状で起訴
ソ連領・モルダヴィアでの《見せしめ裁判》の後、公開処刑。
その遺体は、キシニョフ市中に7日間曝された

この中共への、米ソの牽制は、東欧諸国へ様々な影響を加速した
ソ連軍シベリア撤退を受けて、ゼネラルストライキが始まったハンガリーでは、7日間のストの後、複数政党による選挙の実施を、ハンガリー社会労働党が公約することで収まった

幸いなことに、ウクライナ情勢は安定した
BETAの進行は停止しており、状況は注視され続けていた
敵集団は、アフガンとソ連の国境線に留まっているという状態
中央委員会への説明の後、最前線に戻るつもりであったベルンハルト中尉とシュトラハヴィッツ少将は、ベルリンに2か月留め置かれることになってしまった
手持無沙汰になっていた彼等に待っていたのは、あの館の主人への協力であった

『同志中尉、お帰りになられては』
最先任上級曹長が、ベルンハルト中尉へ、声を掛けた
彼は、タイプライターを前に突っ伏して寝てしまったようだ
思えば連日の会合と、報告書作り
徹夜で臨んだのが祟ったのだろう
『同志曹長、まだ参謀本部に出す書類が……』
机から、椅子に腰かけたまま、起き上がると、彼は曹長の方を振り向いた
そんな彼の顔を覘く
青白く美しい肌は、いつにもまして青白く、唇も白く見える
時折、肩で息をしており、息苦しく様
何か、風邪でも引いたのだろうと、感じ取った曹長は、彼に答えた
『そんなのは、俺の方で何とかしますから。
同志中尉は、この数枚の書類に決裁の署名をなさった後は、ご帰宅ください』
彼は震える手で、サインをした
恐らく、熱が上がってくる際の悪寒に違ない
そう感じ取った曹長は、直ちに、脇に立っていた上等兵を医務室へ向かわせた
青白い顔で、彼はこちらを向き、話しかける
『何、少しばかり寝ただけだ
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