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女護ヶ島にて
第四章
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「今晩はな」
「南蛮か」
「仏蘭西とかいう国のな」
「そうしてくるか」
「土耳古とかいう国のハーレムもええが」
「後宮もよくてか」
「それでお姫様もや」
「相変わらず楽しんでるな、しかしな」 
 東鶴は鯖、焼いたそれを食べつつ世之介に言った。
「あんた米寿だろ」
「気付けばそうなってたな」
「それでもか」
「わしはわしや」
「女が好きか」
「大好きや」
 こう返事を返した。
「そやからな」
「抱き続けるか、その歳になっても」
「変わらんわ」
「よくやるぜ、俺も毎日だがな」
 毎日女を抱いているというのだ。
「三人な」
「あんたも元気やな」
「しかしあんたは四人だ」
 一日でというのだ。
「それもその歳でや」
「そやからおなごやとな」
「どれだけでもか」
「出来るで」
「一体何時まで女を楽しむつもりなんだ」
 男は世之介に問うた。
「それで」
「決まってる、死ぬまでや」 
 世之介は笑って答えた。
「それまでや」
「女を楽しむかい」
「ここは顔立ちの整ったおのこもおるさかい」
 世之介は男ににんまりと嗤ってこうも言った。
「そやからな」
「そっちも楽しんでるな」
「そや、島に行く前も随分楽しんだが」
 それでもというのだ。
「むしろここに来てからがな」
「おいおい、本番だったとか言うなよ」
「それや」
 まさにとだ、世之介は男に笑って返した。
「わしの人生はな」
「六十になってからがか」
「むしろな」
「本番でか」
「もう抱き放題楽しみ放題」
「これまでの助平修行の成果を出してか」
「それをさらに磨いてるわ」
 こう男に返した。
「修行は続けつつな」
「成果もか」
「出してるわ、それで今日も明日も」
「死ぬまでか」
「わしは励むで」
 色、これのことにというのだ。
「そうするで」
「立派だな、還暦で来て米寿になっても励んで」
 男は味噌汁を飲みつつ笑って話した。
「そしてこれからもか」
「やってくわ、むしろこれからや」
「これからもじゃなくてか」
「これからや、そやから飯を食ったらな」
「また女のところに行くか」
「今度は白拍子のとこに行くわ」
 そちらにというのだ。
「それで夜は巫女さんや」
「そうか、じゃあ俺も爺さん程じゃないがな」
 男は笑顔で言う世之介のその言葉を聞いて言った。
「励むな」
「そうするんやな」
「ああ、死ぬまでな」
「そや、色のことも死ぬまでや」 
 世之介は満面の笑顔で言った、そしてだった。 
 この日も次の日もその次の日も色を楽しんだ、彼は女護ヶ島で死ぬまで色に励んだ。その一生は非常に満ち足りたものだったと彼は臨終の間際ににこやかに笑って言ったという。


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