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牧師の背中
第二章

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「それが背中や肩、腕にまであるか」
「だから今まで長袖だったのか」
「夏でも」
「それでプールや海に誘っていても断っていたのか」
「入れ墨があったから」
「間違いない、あの人は呉のヨシだ」
 老人はこうも言った。
「伝説の喧嘩屋の」
「それってどんな人ですか?」
「呉のヨシって」
「喧嘩屋のって」
「もう喧嘩、抗争で誰よりも暴れて敵の組を幾つも潰してきた奴だ」
 老人は周りにこう話した。
「とんでもなく強くて残酷な奴でな、背中の入れ墨がだ」
「あれですか」
「五人男ですか」
「そうだったんですね」
「ああ、鬼みたいな奴だったってな」
 その様にというのだ。
「言われてたが」
「牧師さんがその呉のヨシだったんですか」
「伝説の喧嘩屋の」
「敵の組を幾つも潰してきた」
「鬼みたいな人だったんですか」
「組が解散になって姿を消したが」
 それでもというのだ。
「まさか牧師をやってたなんてな」
「しかもここで」
「そんなの思いもしないですよね」
「幾ら何でも」
「ああ、どういうことなんだ」
 老人は子供を助けてその子供を優しく労わる彼を見ながら呟いた、その彼は入れ墨はしていたがいつもの優しい牧師であった。
 その姿を見て彼は周りに言った。
「とりあえず牧師さんの話を聞くか」
「そうですね」
「まずは本人さんから話を聞きたいですね」
「どうしてヤクザ屋さんから牧師さんになったか」
「そのことを」
「ああ、聞こうな」
 こうしてだった、街の者達は牧師にまずは川に入って冷えた身体を温めて同時に着替える様に話してだった。
 そのうえで彼から話を聞いた、彼は自分のことを素直に話した。
「組が解散してからやることがなくて暫く街をぶらぶらと歩いていてある日パチンコ帰りに教会が目に入りまして」
「それで、ですか」
「教会に入られて」
「そうしてですか」
「その教会の十字架を見て不思議と心が落ち着いて清らかになりました」
 そうなったというのだ。
「それが何故かその教会の牧師さんにお聞きして」
「そうしてですか」
「信仰に目覚められたんですか」
「そうだったんですね」
「それまでは切った張ったで信仰心はなかったです」
 これまではそうだったというのだ。
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