第二章
[8]前話
「それで何で福岡にいるのよ」
「今日の一時位のことだけれど」
沙織は福岡から言って来た、烏の濡れ羽色の長い髪の毛はしっとりとしていて切れ長の垂れ目であり左には泣き黒子がある。色白で艶やかな顔立ちであり一六五程の背で胸は大きくロングスカートでも見事な腰と脚の形がよくわかる。
「あんたじゃないの」
「今日って言っても私福岡どころか九州にこの十年言ったことないのよ」
高校の時に家族旅行で長崎に行ったきりである。
「それでどうしてよ」
「福岡には行ってないの」
「断言するわ、それにあんたに声かけられて無視なんてしないわよ」
久美子はこのことも話した。
「だからね」
「じゃあそっくりさん?」
「そうじゃないの?世の中そうした人もいるでしょ」
「言われてみればそうね、それじゃあ」
「ええ、私じゃないことは確かだから」
久美子はそれは間違いないとした。
「そのことはわかってね」
「わかったわ、怒って御免なさい」
沙織は落ち着きを取り戻して久美子に謝罪した。
「おかしなメールして」
「それはいいわ、じゃあまたね」
「ええ、またね」
これでこの話は終わった、だがその一年後。
久美子は裕一郎と共に札幌の街に出て百貨店の中で買いものをしていると。
そこに沙織がいた、後ろ姿だがこの前送って来たメールの画像の姿そのままだった。後ろ姿だがそうだった。それで彼女に声をかけた。あのやり取りから時々彼女とメールでやり取りする様になったのだ。
「札幌に来てたの?それならそう言ってよ」
「はい?」
振り向いたその人は。
黒子はなく吊り目だった、その彼女が久美子に驚いて言ってきた。
「あの、誰ですか?」
「あっ、すいません」
久美子はすぐに見間違いだとわかって謝罪した。
「知り合いに似ていたので」
「そうだったんですね」
「はい、つい声をかけてしまって」
「いえ、それじゃあ」
その人は見間違われたとわかってそれで彼女の日常に戻った、久美子はその後で夫に話した。
「札幌でもあったわね」
「そうだね」
「見間違いね、後ろ姿が沙織に似てたから」
「彼女だって思ったら」
「違ったわ、福岡では沙織が私と間違えてね」
「札幌ではだね」
「私が沙織と間違えたわ」
今度は自分がというのだ。
「そうなったわ」
「そうだね、そっくりさん似て
いる人はいるものだね」
「何処にもね」
夫に笑って話した、そして買いものの後沙織にそのことをメールで話すと彼女は笑う返信を送ってきた。そうしてお互い様だとメールで話をしたのだった。
福岡からのメール 完
2021・12・22
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