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俺様勇者と武闘家日記
第2部
テドン
新たな目的地
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慣れた船の外観が見えてくると、
「ユウリさーん!! ミオさーん!! ご無事でしたかー!!」
 停泊していた船の船首の方で、船長のヒックスさんが諸手を振って私たちに呼びかけていた。ほんの数日顔を合わせてないのに、なんだかとても懐かしく思えた。
「ヒックスさーん!! ただいま戻りましたー!!」
 急いで船へと近づくと、船員の一人が船に乗り込むための舷梯を下ろしてくれた。
「大丈夫でしたか? なかなか戻ってこないので、心配しましたよ」
 ヒックスさんが破顔して私たちを出迎えてくれる。ほかの船員さんも、心底安堵したような様子だった。
「ごめんなさい。いろいろありまして……」
 ここですべてを話すには多くの時間が必要だ。とりあえず後で話すとして、私はユウリに目を向ける。
「船長。『最後の鍵』というものを知ってるか?」
「『最後の鍵』、ですか……?」
 ユウリの言葉に、ヒックスさんは首を傾げる。どうやら彼も耳にしたことはないらしい。
「すいません、そういうことには疎くて……。ただ、そういう珍しいアイテムの類なら、ひょっとしたらエジンベアという国に行けば何かわかるかもしれませんよ」
「エジンベア? 聞いたことはあるが……、いったいどういう国だ?」
「今は魔王が現れてそれどころではないですが、昔エジンベアは、世界中の宝や珍しいアイテムを手に入れるため、多くの冒険者が船を出したと聞きます。中には他国を侵略してでも手に入れたアイテムもあったとか……。もしかしたら今でも集めたお宝やアイテムが国内に保管されているかもしれませんよ」
「随分物騒な国だが、行ってみる価値はありそうだな」
「ならすぐにでも進路を変えますか?」
「ああ、次の目的地はエジンベアで頼む」
 今はとにかく最後の鍵の情報を手に入れたい。ユウリはすぐに決断した。
「わかりました。それはそうとユウリさん、お体の方は大丈夫なのですか?」
 ヒックスさんの言葉に、ユウリは意外そうな顔をした。どうやらヒックスさんが自分の体調に気づいていたことを、知らなかったようだ。
「ああ。もうすっかりよくなった」
 実際、カリーナさんのところで一晩休んだユウリは、その前の日よりも格段に顔色がよくなっていた。カリーナさんが作った素朴で温かい食事や、寝心地の良いベッドで休んだことがよかったのだろう。かくいう私も、カリーナさんの温かいもてなしに、心も体も癒された。カリーナさんと出会わなければ、こんなに清々しい気持ちで船に戻ることはなかっただろう。
 ほかの船員さんたちも私たちの顔を見るたびに労ってくれて、それがとても嬉しかった。
 私たちの旅は、出会った人々によって支えられている。そのことをいまさらながら痛感し、私は再び始まる船の旅に気持ちを切り替えることにしたのだった。
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