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変なおじさん
第三章
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「怪我して身体が満足に動かなくなって痛くてね」
「それでなんだ」
「痛くなくなる為にヒロポンを使って」
「ああなったのよ、怪我が酷くてお仕事も出来ない位だけれど」
 それでもというのだ。
「昔はね」
「立派だったんだね」
「戦争で戦ってきたんだね」
「そうした人だったんだよ」
 二人の子供達にこのことも話した、そして後は子供達に外で遊ぶ様に言った。
 昭和は進み平成になり令和になった、それと共に幹弘も幾多郎も成長し歳を取り家庭も持った、高校や大学を卒業して就職し定年も迎え。
 今は悠々自適の生活になった、それで幹弘は大学生の孫の光昭、きりっとした顔で細目に茶髪で背の高い彼が東京で覚醒剤が広まってることを話すとこう言った。
「あれはするなよ」
「するかよ、馬鹿高いっていうしな」
 孫は家で祖父にこう返した。
「しかも身体ボロボロになるだろ」
「心だってな」
「あんなのするなんてな」
 それこそというのだ。
「馬鹿だからな」
「わかってたらいい、祖父ちゃんが子供の頃な、近所の豊田の爺さんと一緒に見たんだ」
「祖父ちゃんの子供の頃からの友達だよな、あの人」
「ああ、昔は覚醒剤はヒロポンっていって普通に売っててな」
「覚醒剤をかよ」
「昔はそうだったんだ、それでな」
 子供の頃見たあの男のことを思い出しつつ話した。
「法律で禁止されてもまだやってる人もいてな」
「それやばいだろ」
「やばくても昔はそうだったんだ」
 こう孫に話した。
「戦争で怪我して痛み止めとかで手を出してな」
「それで中毒になったんだな」
「それで完全におかしくなってた」
「昔はそうだったんだな、やばいな」
「昔は昔でな、そんな人を見たから余計に言うんだ」
「覚醒剤は駄目だな」
「絶対にやるな」
 間違ってもとだ、孫にさらに言った。今彼はテーブルの自分の席でビールを飲んでいる。孫は今流行りのストロング系のレモンを飲んでいる。ごくごくといい飲みっぷりである。
「いいな」
「わかってるさ、それでその覚醒剤やってた人どうなったんだよ」
 孫は缶ごとその酒を飲みつつ祖父に問うた。
「一体」
「後でヒロポン止めたらしいがずっと一人で家に暮らしていてな」
 戦傷者への年金でそうしていたのは大人になってから知った。
「寂しく死んだらしいな」
「そうか」
「ああ、止めてもな」
「そうなるものなんだな」
「一人でいたのは別だがな」
 ヒロポン即ち覚醒剤とはだ。
「けれどな」
「そうして死んだんだな」
「ああ、そういうの見てきたからな」
「覚醒剤はか」
「やるな、いいな」
「誰がするか、酒で十分だろ」
 孫はこう言ってまた酒を飲んだ、そしてまだまだ歯が丈夫な祖父に自分が食べている柿ピーの袋を一つ差し出した。
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