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足はいつも奇麗に
第二章

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「してるから」
「かなりましか」
「けれど出航中はね」
「洗濯は出来ないな」
「そう、だからね」
 それでというのだ。
「そうしたこともね」
「インキンも多いか、それに」
 北川は本をさらに読みつつ言った。
「足もな」
「水虫ね」
「ああ、水虫もな」
 これもというのだ。
「なるんだな」
「そうよ、水虫も不衛生だとね」
「なるんだな」
「海軍の人というか船乗りの人は気を付けないと」
 さもないと、というのだ。
「なりやすいのよ」
「湿気も多いしな」
「それで通気性の悪い靴でしょ」
「軍隊は革靴だしな」
「だから余計に」
 尚更というのだ。
「水虫にもなりやすいのよ」
「そうなんだな」
「実は親戚の人に海上自衛隊にいたことのある人がいて」
「その人がか」
「どっちもなったのよ」
 インキンそして水虫にというのだ。
「それで大変だったって子供の頃に聞いて」
「お前はいつも奇麗にしてるか」
「それで足の裏もね」
 こちらもというのだ。
「奇麗にしてるのよ」
「そうなんだな」
「そう、そして」 
 それでというのだ。
「あなたもね」
「俺もいつも安全靴でな」
「安全靴も通気性悪いでしょ」
「足を守ってくれるけれどな」
「だから尚更ね」
「家に帰るとか」
「消毒してもらってるの」
 夫にこのことを話した。
「そういうことなの」
「よくわかった、俺も水虫にはなりたくないしな」
 当然インキンにもだ、なると厄介なのは彼も知っている。
「じゃあこれからもな」
「足の裏も奇麗にね」
「そうしていくな」 
 こう妻に答えた、以後彼は妻のそうしたことに文句を言うことはなくなった。それが自分の為にもなるとわかったので。
 それで妻に言った。
「その親戚の人今は大丈夫か」
「どっちも完治はしないらしいけれどね」
「痒くなってないんだな」
「そう言ってたわ」
「だったらいいな」
「ええ、けれど大事なのはね」
「最初からならないことだな」
 妻に笑って言った、自分もそうしようと決意しつつ。


足はいつも奇麗に   完


               2021・10・23
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